ステロイドは使わない!
アトピーはこうして治す 第2版
著者:丹羽正幸
第2章------アトピー性皮膚炎「完治」のための実践編---4つの体質改善プログラム---
4つの体質改善プログラムでアトピーは必ず治る!
身体の弱点がアトピーを呼んでいる?
 アトピーを治す体質改善のプログラムについて説明する前に、体質改善でどのようにしてアトピーが治っていくのか、具体的なイメージをつかんでいただけるので、一人の患者さんの体験を紹介しましょう。

 ここに、一通の手記があります。
 OLの高畑良子さん(仮名)が書いてくれたものです。彼女が初めて私のクリニックを訪れたのは、1年半ほど前のことでした。目深に帽子をかぶり、うつむき加減に診察室に入ってきたときの彼女の姿を私は今もよく覚えています。
 帽子の下からみえる皮膚は、黒ずんだように変色して腫れあがっていました。カルテをみると、まだ20代のお嬢さんです。きっと苦しい思いをされてきたのでしょう。表情も暗く、小さな声で話される様子から、精神的にも相当なダメージを受けていることが見受けられました。
 それでも症状について話す内容は的確で、頭の回転もよく、チャーミングなお嬢さんであることがうかがえました。彼女が今までに他の病院でどんなことをいわれ、どんな治療を受けてきたのかも、だいたい察しはつきます。
 私は、なぐさめでも何でもなく確信をもって、
「大丈夫、必ず治りますよ。完治を目指しましょう」
 と彼女に語りかけました。
 それからの彼女は、まさに模範的な患者さんでした。漢方薬、ビタミン・ミネラル療法、正體治療、温熱治療のすべてをこなし、スキンケアにも十分な注意をはらっていました。治っていく途中で生じる猛烈なかゆみにも必死で耐える様子に、無理してがんばりすぎないようにと声をかけたほどです。
 その彼女が、本書を執筆するにあたって、どうしても一言寄せたいと申し出てくれたのです。
「先生のためじゃありませんよ。今現在、重いアトピー症状で苦しんでいる方たちに、『私でも治ることができたのだから、あきらめないで!』そうメッセージを送りたいのです」
 彼女はすっかりきれいになった頬を少し赤らめながら、笑顔でそう話してくれました。
 自分のつらい体験を公開するのは、勇気のいることだったと思います。それだけに、治療に携わる私自身も、彼女の想いを真摯に受けとめなければいけないと思うのです。またアトピーに苦しんでいる皆さんにも、彼女の真剣な想いを読みとっていただければと思います。  ステロイドを使わないで、体質を変える「統合医療」の真実を、多くの方に知っていただくため、彼女の体験を掲載することにしました。
CASE--重症のアトピー、リウマチ。絶望の淵から希望がわいた「体質改善」という特効薬
 高畑良子(OL・28歳 東京都)
○ まぶたの腫れがアレルギーのきっかけ
 自分がアトピー性皮膚炎になったのだと自覚するまで、どれぐらい時間がかかったでしょうか。
 子どもの頃から思いきり健康だったために、それまでは「健康」について考えたことすらありませんでした。怪我や病気で入院した経験など一度もなかったし、会社の健康診断に引っかかったこともありません。
 数年に一度、風邪をひくぐらいで、風邪をひいても1日寝ていれば治ってしまう、それほど健康体だったのです。
 ところが、2年前の春のこと。なぜか夜中になると、ときどきまぶたが腫れるようになったのです。はじめは右のまぶただけでした。かゆくて目を覚ますと、まぶたが虫にさされたように腫れているのです。
 少しすると、腫れ方がひどくなってきました。目が開かないほどまぶたが腫れあがり、ぶよぶよとして、しかも熱をもっています。この頃には2〜3日に一度は、腫れた目に気づいて夜中に飛びおきるようになっていました。けれども不思議なことに、朝になるとなぜか腫れはひいていて、仕事にも日常生活にも支障はなかったのです。
 それから間もなく、今度は左目のまぶたも同じように腫れるようになってきました。しかも、朝になっても完全に腫れがひかず、かゆくてたまりません。さすがに、これはただごとではないと思った私は、会社帰りに近所の皮膚科に駆けこみました。
「アレルギー」という言葉が出てきたのは、このときです。
「私、今まで花粉症にもなったことないんですけど本当にアレルギーなんでしょうか?」
 診断に納得のいかない私は、先生にややきつい口調でそう尋ねたことを覚えています。けれども、血液検査の結果をみれば、疑いの余地はありませんでした。そのときに調べていただいたあらゆる物質に、アレルギー反応が出ていたのです。
 とにかく私の身体の中で、何かが起こっているらしいことはわかりました。でも先生もそれ以上の検査や治療はしませんでしたから、その日は軟膏を2種類と飲み薬をいただいて帰ってきたのです。このとき、薬についてのくわしい説明はありませんでした。
 そして「ステロイド」という言葉さえ知らなかった私は、素直に軟膏を1日数回、まぶたに塗っていたのです。しかし、1週間たっても症状はよくなりません。少しよくなったかなと思うと、その部分がカサカサになってまた腫れてしまう、その繰りかえしです。
 そのうちに症状はよくなるどころか、前以上に腫れる範囲が広がってきました。職場では皆から「どうしたの?」と、心配半分興味半分で聞かれ、家では母がおろおろするばかりで、私もついイライラして心配する母にきつい言葉を投げつけてしまう……。この頃から、精神的にも不安定になってきたように思います。
○ ステロイドの副作用に、リウマチ宣告の追いうち!
 治療に行きづまりを感じた私は、病院を変えることにしました。
 けれども新しい病院でも、また血液検査から始めて、軟膏を処方されて……と治療はどこの病院でも同じです。しかも前の病院でもらった薬でよくならなかったことを話すと、先生は何を思ったのか、前以上に強いステロイド剤を処方したのです。
 ステロイドの知識などまったくない私は、今度こそよくなると信じて軟膏をつけました。ところがその中の一本をつけると顔が焼けるように熱くなるのです。そこでおかしいと思えばいいのでしょうが、バカな私はよくなるためには仕方がないのだと信じて、我慢して軟膏を塗りつづけたのです。
 結果は、悲惨でした。顔中が赤くただれたようになり、熱をもって痛いのです。とても人にみせられる状態ではありません。ショックのあまり、私は何年ぶりかで高熱を出し、寝こんでしまいました。ところが、この熱はショックで出たわけではなかったのです。熱が出るのとほぼ同時に、右肩に激痛が走るようになりました。
 確かに、少し前から肩が変だなと感じており、まるでゆがんでいるかのように、右肩が後ろにねじれたようになって、こわばった感じもありました。でも、顔が腫れたり赤くただれたせいで、ろくに身体を動かしていないからだろうぐらいに思っていたのです。
 肩の痛みはどんどんひどくなり、昼間は熱が下がっても、夜になると高熱が出る状態を繰りかえすようになりました。さらに痛みはアゴにまでまわり、お箸も入らないほど口が開かなくなってしまいました。もうこれ以上、放っておくわけにはいきません。
 とうとう私は、大学病院に行くことにしました。そして三度目の血液検査です。さらに検査は数日間にわたり、そこで初めて病名が告げられました。病名は「リウマチ」に加え「膠原病」の疑いがあり、そして「重度のアトピー性皮膚炎」というものでした。
 正直、ショックでした。それまではリウマチというのはお年寄りがかかる病気だとばかり思っていたのですが、そんなことはないのですね。若くてもリウマチで苦しんでいる人は、多いのだということを初めて知りました。また、膠原病もリウマチも、どちらもかなり深刻な病気であること、完治は難しいことも知ったのです。
 アトピー性皮膚炎も、私の場合はかなり症状が重く、食べ物のIgE・RAST(血液中のIgE抗体濃度を測定する)検査をした結果、アレルギー反応が出ていないのはお米とジャガイモぐらいで、肉も魚も野菜にすらアレルギー反応が出ており、厳しい食事制限をしなければ、顔が腫れるぐらいではすまないこともわかりました。
「このまま一生、これらの病気を背負い、食べたいものも食べられず、おしゃれをすることもできない、もしかしたら仕事や結婚もできないかもしれない……」
 そう考えると身体が震えるほど怖く、絶望的な気持ちになっていきました。家族にはいえないけれど、いっそ死んでしまいたいとまで、このときの私は思いつめていたのです。
 そんな精神状態のなか、大学病院への通院が始まりました。職場には、休職届を出しました。ついこの間まで、病気とはまったく縁がないと思っていた私が、今ではすっかり病人です。精神的にも追いつめられ、病院に通う以外は何もする気が起きません。
 母がそんな私を心配して、買い物に行こうと誘ってくれるのですが、変わりはてた顔で、お気に入りの店に行く気にはなれないし、食べられるものは限られているので、ランチを食べることもできません。おしゃれをする気持ちにもなれず、ただ身体の痛みと戦い、家でぼんやりと音楽を聴きながら過ごす、そんな日々が続きました。
○ 丹羽クリニックで「大丈夫、治る」という言葉
 そんなある日、母が知人から「丹羽クリニック」のことを聞いてきたのです。
「専門はアレルギーだけど、他の病気を抱えている人も来ているんですって。あなたと同じリウマチの人もいるし、なかにはガンの人もいるらしいのよ」
 母に熱心にすすめられ、そのときの私はたいした期待もせずに、丹羽クリニックへと出かけていったのです。運命の出会いになるとは夢にも思わずに。
 丹羽クリニックでまず驚いたのは、診察がとてもていねいなことでした。皮膚科でも、大学病院でも、症状を訴えると、ひととおり話は聞いてくれるもののそれで終わり。すぐに検査にまわされ、結果を説明され、薬を処方され、次の予約を入れて帰ってくる、その繰りかえしでした。
 ところが、丹羽先生は違いました。今までいくつか病院には行きましたが、私の話をじっくりと聞いてくださったのは先生が初めてでした。
 そして「大丈夫、治りますよ」といってくださったのも、先生だけだったのです。
 病気についても私がわかるようにきちんと説明してくださり、症状を「抑える」とか「逃げる」という消極的な言葉ではなく、きちんと向かい合って「完治を目指しましょう」と、先生はそう励ましてくださいました。
 そして、どういう治療をするのか、治療のプランについてもきちんと説明をしてくださり、私の場合は漢方と丹羽式正體を中心に、今のひどい症状を何とか和らげるところから始めることになったのです。先のことを考えたのは久しぶりでした。もう何カ月もの間、今が最悪すぎて、これから先のことなど考える気力もなかったのです。
○ 週2回、2時間の体質改善プログラムの開始!
 ようやく、丹羽クリニックへの通院が始まりました。週に2回、正體にも行くので、治療には2時間ほどかかります。正體を受けたのは生まれて初めてでしたが、ここで驚くべきことが起こりました。1回目の正體を受けた直後から、今までの肩の痛みが嘘のように軽くなったのです。なぜ、あんなに苦しんでいたのだろうか? そう思うくらい一気に症状が軽くなり、身体が楽になったのです。
 ただし、顔の腫れはそう簡単には治まりませんでした。強いステロイドを使ったことで、症状を複雑にしてしまったのです。漢方、正體、抗アレルギー剤、ビタミンと体質改善を行ったにもかかわらず、最初の3週間はまったく症状が変わらないようにみえました。
 それどころか、皮膚の赤く盛りあがったところから黄色い液がにじみだして、服も汚してしまうほどでした。丹羽先生のことは信頼していましたが、内心「本当に大丈夫なの?」と思ったことも事実です。
 ところが、ちょうど3週間たった頃、皮膚に変化が出てきました。今まで黄色い液でべたっとしていた皮膚が乾燥してきて、皮がむけはじめたのです。あれと思う間に、ボロボロと皮膚がむけていきます。皮がむけはじめた当初は、たいへんなことになってしまったと驚いたのですが心配は不要でした。
 新しいきれいな皮膚がつくられはじめたために、今までの汚れた皮膚がはがれてきたのです。ただし、このときのかゆさは尋常ではありませんでした。頭が真っ白になってしまうほど、かゆくてかゆくて、そのことしか考えられません。私は「治っている、治っている」と心の中で繰りかえしながら必死で我慢しました。
 この「黄色い液が出る」→「乾燥する」→「皮がむける」というサイクルを何回、繰りかえしたでしょうか。新しい皮膚ができるたびに、少しずつ赤みや腫れがひいて、皮膚がしっとりと弾力をもつようになってきました。
○「あきらめ」から「がんばろう」への努力
 もちろん、順調なことばかりではありません。リウマチの症状が悪化し、身体の痛みが激しく、夜も満足に眠れない日が続いたときには、肌の症状も悪化しました。寒い日が続いて肌の乾燥がひどくなったときにも、症状が後戻りしてしまいました。
 それでも半年が経過した頃には、以前の腫れあがった顔が嘘のように、肌がきれいになっていたのです。もちろん、完璧に治ったというわけにはいきません。最後まで症状が残ったのが、目のまわりと口のまわりで、「今日はちょっと体調が悪いな」と思うと、やはり口のまわりが赤く腫れてしまいます。
 正體も、面倒になってさぼると肩の痛みが戻ってくるので、がんばって続けました。
 3カ月を過ぎた頃からでしょうか、少しずつですが、肩のゆがみがとれてきたのを感じられるようになりました。また、リウマチのせいなのか、朝、指がこわばって思うように動かないことも多いのですが、正體を受けた後は指もよく動きます。正體を受けたその日よりも、次の日ぐらいになると、痛みが治まって体調もいいのです。
 こうして、半年を過ぎる頃には、さまざまな症状がかなり落ちついてきました。気持ちにも変化が出てきて、「あきらめ」から「がんばろう」に変わり、あれもしたいこれもしたいと思うまでに元気になったのです。
○ アトピー症状は消え、仕事に復帰できた!
 この頃には、仕事にも復帰できるようになりました。職場にも恵まれていたのだと思います。病気を抱えながらの復帰で私自身にも不安があったのですが、快く迎えてくれ、通院のために残業できないぶんもフォローしてくれたのです。
 こんなにみんなが応援してくれているのだから、何としてでも元気にならなくては! その一心で食事にも十分に注意をはらい、天然成分の石鹸でていねいに洗顔をし、家でできるストレッチも続けました。
 そして丸1年が過ぎた今、私が重症のアトピーで、しかもリウマチの持病もあるとは誰も気づかないでしょう。もう重症のアトピーではありません。もしかしたらアトピーになりやすいタイプのままかもしれないけれど、今の私はもうアトピーではないのです。
 食べられるものの範囲もずいぶん広がり、ひどかった顔の腫れやただれもなくなり、知らない人がみたらちょっと吹き出ものはあるけれど、アトピーとは思わないはずです。
 何より正體のおかげで、自分がリウマチであることを苦にしないで生活できます。最近は1〜2週間に一度診察を受ければいいのですが、ちょっと身体の調子がおかしいなと思う日には正體を受けに行きます。すると、身体が温まって、痛みもなくなり、食欲も出てきます。パワーが戻ってくるという感じなのです。この先、もっと症状がよくなったとしても、正體や、漢方や、ビタミン飲用は、体質改善のためにずっと続けるつもりです。もう手放せません。
 最近、ふと後悔することがあります。あのいちばん症状がひどかったときに、写真を一枚撮っておけばよかったなあと。今の私と見比べてもらったら、今現在アトピーで苦しんでいる人たちに「こんなに変われるのよ」と説得力をもって教えてあげられ、勇気づけてあげられるのに……。二枚の写真を見比べてもらうことができたら、言葉での説明は必要ないでしょう。もっともあの頃、写真を撮ろうなんて考えることもできなかったけれど。
 あのとき、母のすすめで丹羽先生のところへ行かなかったら、今の私はいなかったでしょう。丹羽先生に治療を受けていなかったら、今ごろ私は一体どんな状態になっていたのだろう? そう想像するだけで恐ろしい想いでいっぱいです。
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 高畑さんが来院されたとき、いくつかの病院でステロイド治療を受けており、またリウマチなどの病気もあって、完治までには時間が必要な状態でした。さらに、皮膚が薄くて過敏で薬剤にも反応しやすいために治りにくいタイプだったのです。それでも、高畑さんは1年かけて見事に体質改善に成功し、すでにアトピーは完治したといっていいでしょう。
 治療を始めて3週間ほどは皮膚の剥落が激しく、かえって悪化したように思われたそうです。それでも私たちの治療法を信じて、続けていただけたことが何よりでした。
 体質の改善がアトピーの完治に効果があることが、ご理解いただけたでしょうか。
アトピー撃退には体質改善がいちばんいい
 アトピーを完全に治すためにできること、そしてやるべきことは何でしょうか。
 それは、「体質改善」です。
「なんだ、そんなこと」
「たったそれだけ?」
 もっと画期的な方法を想像していた人には、拍子抜けかもしれません。また、「体質改善なら、すでに治療にとりいれているよ」という人もいるでしょう。
 では、「体質改善」とは具体的にどんなものか、聞かれたら何と答えるでしょうか?
 アトピー性皮膚炎に苦しんでいるあなたや家族は、体質改善といえることに取り組んでいますか? どんな方法で、何をするのが体質改善だと思っていますか?
 たとえば、あなたが食事に十分に気をつけていて、抗原(アレルゲン)となる食品をとらないようにしているとしましょう。しかし、これは体質改善ではありません。対症療法です。卵も大豆も小麦粉も、本来なら身体にとりこんでも問題はないはずのものです。それらの食品をとることができないのは、アトピー体質が治っていない証拠です。つまり、体質が変わっていないのです。
 では、運動はどうでしょうか。運動するのは身体にとてもよいことですが、アトピーを治すためにもっとも有効な運動はどんなものか、きちんと把握していますか? 体力をつけることは身体にいいことですが、鍛えればアトピーは治るのでしょうか。
 アトピーを克服するために、どんな「体質」に身体を改善していけばいいのかわからないまま、自己流の努力を続けても、残念ながら思ったほどの効果は上がりません。
 ところが、どんな身体に改善すればいいのか、わかったうえで体質改善を始めると、前述の高畑さんのように、最初の4週間のうちに、まず何らかの変化が現れてきます。そして、4週間が過ぎて新しい皮膚が表面に出てくると、驚くような変化が現れる人もいます。
 さらに8週、12週と皮膚の再生が繰りかえされるたびに変化は続き、3カ月から4カ月たった頃には、ほぼ全員に改善がみられはじめます。
 この頃には、もうひとつうれしい変化があります。それは、患者さんの笑顔です。それまではみられなかった、心の底からの笑顔がみられるようになるのです。体質改善は身体と同時に心まで改善してしまうのだと、逆に患者さんから学んだような気がします。
アトピー患者に共通する4つの弱点
 それでは、体質改善のプログラムとは一体どんなものなのでしょうか? 具体的に説明していきましょう。体質改善プログラムにおいて、まっ先に行うことは、患者さんの身体の弱い部分をみいだすことです。
 200項目にわたる問診票で患者さんの自覚症状をチェックし、それに加えて西洋医学と東洋医学双方からの客観的な診断をしたところ、アトピー患者には共通する「身体の弱点」があることがわかってきたのです。まず、この弱点をよく知って、弱い部分から「体質改善」を考えていくことが、完治への早道です。その共通する弱点とは、次の4つです。

 (1) 胃腸が弱く、消化吸収能力が低い
 (2) 皮膚が薄い
 (3) 身体にゆがみがある
 (4) よい汗がかけない

 なぜ、アトピー患者の皆さんがこのような同じ弱点をもちながら、治療の対象として今まで注目されなかったのか? 理由は、この弱点が、一見アレルギーとは何の関係もないようにみえるからです。アトピー性皮膚炎の治療で皮膚科の診察を受けても、おそらく医師から「このような症状で困っていませんか」と質問されることはまれでしょう。
 また、あなたがこの「弱点」で困っているのであれば、皮膚科ではなく、内科や整形外科で相談するかもしれません。しかしこの弱点は、アレルギーそのものとは関係がないようにみえて、実はアレルギー克服の重要なカギとなっているのです。
 少々わかりにくいかもしれませんので、個々の弱点について、もう少し具体的な症状を説明していきましょう。

(1) 胃腸が弱く、消化吸収能力が低い
 食べたものは、唾液や胃腸の消化液で小さな分子に分解されて、腸粘膜から吸収されます。さらに門脈という血管内を通り、肝臓に運ばれ処理されて、人間に必要なたんぱく質や脂肪、糖などにつくりかえられるのです。
 しかし胃腸の消化力が弱いと食べ物の成分を十分に小さく分解することができず、腸で正常な吸収が行われません。
 ところが粘膜が薄くなっていたり、腸の状態が悪い場合には、未消化で分子の大きなままの食べ物が腸管から吸収されます。身体はこうした未消化の食べ物をうまく処理できないために、本来、身体の中にあってはいけない異物と認識してしまい、免疫機能を発動させて排除しようとするのです。これが食物アレルギーです。胃腸の消化吸収機能が正常であれば身体の栄養になる食べ物が、逆に身体を害するアレルゲン(抗原)になってしまうのです。
 胃腸が弱い人のお腹をさわってみると緊張してかたかったり、やわらかすぎたりしています。中国医学でいう「脾虚」の状態です。便秘や下痢だったり、便の状態がかたかったりやわらかかったりする人は胃腸を改善する必要があるのです。

(2) 皮膚が薄い
 アトピーが出ている皮膚はカサついていたり、かさぶたになっていたりするので、一見すると厚くなっているように思えます。ところがこの厚さは慢性的な炎症によるみせかけの厚さであり、実はアトピーの人は、皮膚が例外なく薄くなっているのです。
 次項でくわしく述べますが、皮膚は上から「表皮」「真皮」「皮下組織」でできています。このうち真皮には「汗腺」「皮脂腺」「リンパ管」「神経」「毛細血管」があり、正常に機能するためには、真皮にある程度の厚さが必要なのです。
 というのも、真皮にはりめぐらされている血管で運ばれる栄養により、皮膚がつくられ、その血流に乗って白血球などが運ばれてきて、細菌の感染などから身体を守るからです。ですから皮膚が厚いほど血管が多く、血液もたくさん流れるために皮膚をつくる機能も活発になり、さらには汗や皮脂の分泌が活発になるわけです。
 ですから皮膚の薄い人はどうしても皮膚の補修・回復が遅く、傷や炎症も治りにくくなってしまうのです。
 ただし皮膚の厚さには遺伝的な要素が大きく関わっていますので、もともとの体質による部分があります。
 また、皮膚を薄くする原因のひとつに、ステロイド剤があります。ステロイド剤は皮膚の血流量を低下させ、皮膚を萎縮させて皮脂や汗の分泌機能なども弱らせてしまうのです。

(3) 身体にゆがみやねじれがある
 身体のゆがみが皮膚の状態と関係があるといっても、ピンとこないかもしれません。しかし私は外科医として手術に携わっていた頃から、身体のゆがみが血流を阻害し、その先にある組織に障害を引きおこす例を数多くみてきました。
 皮膚への血液は、必ずその下の筋肉の中を通る血管によって運ばれていきます。ですから筋肉にゆがみやねじれがあるとそこで血管が圧迫されて、その先にある皮膚の血流が悪くなってしまうのです。
 筋肉のゆがみやねじれは、さまざまな原因で引きおこされます。
 一つにはデスクワークなどで一日中同じ姿勢をとりつづけたり、運動不足に陥ったり、年をとって筋肉が衰えたりなど、毎日の生活で生じる小さな無理の積み重ねや、筋肉の萎縮や衰えがあります。小さな筋肉のねじれが他の筋肉や関節のねじれを生み、ついには身体全体のゆがみにつながってしまうのです。
 さらに日本の将来にとってゆゆしき問題は、子どもが外で遊ばなくなったことです。子どもは外で遊び、身体を動かして運動することで、成長する骨格に見合った筋肉を発達させます。ところが筋肉が十分に発達しないと身体にアンバランスが生じ、次第に大きなゆがみが生まれてしまうのです。
 また、運動するとすぐに心拍数が上がり、身体が温まることからもわかるように、筋肉は大量の血液を必要としますので、筋肉が未発達だったり衰えていたりすると血流も少なくなってしまうのです。その結果、皮膚への血量が低下し、抵抗力が弱まってしまいます。

(4)よい汗がかけない
 そもそもアトピー患者の多くが、汗そのものをあまりかかないようです。汗をかくと症状が悪化するからというより、なかなか汗が出てこないのです。これは、単純に新陳代謝が悪いといったレベルの問題ではありません。次項でもう少しくわしく説明しますが、アトピー性皮膚炎の患者のほぼ全員が、発汗の問題を抱えています。汗が出ない、汗をかくとかゆくなる、下着のあたる部分だけに汗をかくなど、症状は人によって違います。
 そもそも汗をかくことはアトピーによくないと考えている人がいますが、これはまったくの間違いです。かゆみが出るのは、アトピーの人の汗は皮脂の量が少ない、べたっとした汗で、皮膚が薄くなっていることもあり刺激されるからです。
 ここであげる「よい汗」とは、スポーツ選手がそれこそ噴きだすようにかいた汗、皮膚を転がりおちるような「玉の汗」です。そのような汗は水分量と皮脂の量が一定の割合でできているからこそ、皮膚を転がりおちるのです。
 ところがアトピーでは、汗をかけない身体になっている人がとても多く、これは皮膚が薄くなって汗腺や皮脂腺の働きが衰えているのが原因です。

 この4つの症状が、実はアトピーに大きな影響をおよぼしているのです。いかがでしょうか? あてはまる症状がありませんか?
「確かに自分もそうだ」「うちの子も同じだわ」と驚かれているのではありませんか?
 患者さんのなかには、「実は、胃が弱くて内科に、肩コリで整形外科にお世話になっているのですが、まさかアトピーと関係しているとは思いませんでした」
 と診察券までみせてくれた方もいました。
 弱点を把握することで、克服の方向性もみえてきます。やみくもに身体を鍛えるのではなく、自分の身体の弱点を補っていくことで、アトピーにつけいる隙を与えない、本当の意味での「強い身体」をつくることができるのです。
体質改善のための4つのプログラム
 つらいアトピー性皮膚炎のトンネルから抜けだすための道すじが、少しはみえてきたでしょうか。完治に向けて自分の弱点を把握し、克服するためにできることを実行しましょう。私は現在、治療のためのプログラムとして、次の4つの柱を立てています。

 (1) 漢方による治療(体質改善)
 (2) ビタミン・ミネラル療法(皮膚に栄養を与える・皮膚の代謝を促す)
 (3) 正しいスキンケアの指導(皮膚の保護)
 (4) 丹羽式正體(ゆがみを治す・皮膚の血流量を増加させる・免疫力を高める)

 20年というアレルギー治療の経験のなかで試行錯誤の結果、編みだしたのが、この4つの柱です。体質改善のための4つの柱については、順に説明していきます。
 この4つの体質改善法は、通常の皮膚科の治療とは違う内容ですから、皆さんも驚かれるかもしれません。しかし、実際に私のクリニックに通院されている方たちは、他の施設の協力もあり、漢方のみならず、ビタミン・ミネラル療法、正體、スキンケアの指導も合わせて治療を受けており、成果も上がっています。決して特別な器具や薬を使った難しい治療をするわけではなく、家庭でできることもたくさんあります。
 西洋と東洋の医学の学ぶべきところをとりいれ、人が本来、もっているはずの「健康な身体」を取り戻すのが最終的な目的です。
「生まれ変わる」と簡単にいうのはいけないかもしれませんが、この4つの体質改善を続けた患者さんたちは、まさに「生まれ変わった」ようにみえます。
 胃腸の不調や頭痛、生理痛など、長年悩みつづけ、「体質だから仕方ない」とあきらめていた症状から解放され、元気で強い身体に変わるのです。
 そしてそれが、アトピー完治にとって不可欠なステップなのです。
体質改善プログラム(1) 自然治癒力アップには、漢方薬に勝るものなし!
自然治癒力を引きだす、漢方の威力
「アトピーの完治」という目標を達成するうえで、決して外すことのできないのが、「漢方による体質改善」です。
 漢方は、さまざまな生薬を長い経験によって絶妙のバランスで配合した、100%天然素材の薬です。現在では漢方の効果はそのままに、手軽に利用できるエキス剤や錠剤などもつくられ、私たちの生活に広く受け入れられています。
 漢方薬の素晴らしさは、何よりも、人間が本来もっている「自然治癒力」を高めることにあります。人は誰にでも傷ついた部分を補修し、復元しようとする自己回復力が備わっています。しかしアトピーの患者さんは、その「自然治癒力」が著しく低下しているために、補修・復元作業が思うようにできないのです。アトピーから脱却するためには、まず人並みの「自然治癒力」を取り戻すことが必要で、だからこそ漢方なのです。
 ただし漢方は、同じ症状の人にまったく同じ薬を処方するわけではなく、アトピー患者にはこの漢方、と決められた使い方は決してしません。また、中国医学ではどんな病気に対しても「治療の順序」が原則として決まっています。風邪でもアトピーでも偏頭痛でも、この基本的な治療の順序は変わらないのです。 そしてこの順序は、非常に理にかなったものであり、大切な部分でもあるので、紹介しておきましょう。

(1) 胃腸機能の不調
 まず第一に、胃の痛み、食欲不振、消化不良、便秘・下痢が交互にくる、ガスがたまる、お腹がはるなどの症状を改善します。一行の便(スルッとしたバナナのような形のよい便)が出るようになれば、胃腸が改善された証拠です。

(2) 気虚
 元気がない、疲れやすい、気力がない、持続力がないなどの状態をいいます。漢方では患者さんの自覚症状を重視するため「そんな気がする」といった漠然とした症状であっても重視して改善します。

(3) 血虚
 貧血、顔色が悪い、冷える、むくむ、疲れやすいなどの状態があれば改善します。

(4) 皮膚の症状
 呼吸器の状態と合わせて、皮膚がカサカサしている、ジュクジュクする、赤みが強いなどの症状別に、それぞれに合った漢方薬を処方します。また、免疫力を改善し、再発を防ぐための薬も処方します。

 中国には、もともとアトピー性皮膚炎という概念はありませんが、「顔面紅斑」という言葉は昔からあり、この場合には漢方の「消風散」などが処方されます。ちなみに最近では、中国でもステロイド外用剤が多く使用されているといった報告もあります。
 また、アトピー性皮膚炎の治療に漢方を用いる場合、ステロイドを一時的に使用する場合と、使用しない場合では、処方が異なってきます。
 このように、それぞれの症状を細かくチェックしていくため、漢方薬を処方する際には、問診が欠かせません。それぞれの体質、体格、体力、そして症状を目でみて話を聞いて、初めてその人に適した漢方を処方できるのです。
 前述したように漢方は、知識のないままに服用するのはとても危険ですので、漢方を飲みはじめるときには、漢方をとりいれた治療を明記しているクリニック、あるいは漢方専門の薬局に行ってください。
 というのも漢方については、今でもいくつか誤解があるからなのです。たとえば、漢方は長期間飲みつづけて、初めて効果が現れると思いこんでいる人が多いようですが、即効性のある漢方もあります。さらに、「漢方は副作用もなく身体にやさしい」という先入観がありますが、体質に合わないものを服用すれば、かえって体調を崩すこともありますし、かなり効果が強く出るものもあります。くれぐれも自己判断で服用したり、人から薬を分けてもらうことはしないでください。
アトピー完治には、こんな漢方が効果的!
 ここで、体質改善に効果のある、主な漢方薬を紹介しておきましょう。興味のある人は、必ずクリニックや漢方薬局で問診を受けてから服用してください。とくに、ステロイドを使用している場合と、使用していない場合では皮膚症状の表れ方が異なり、処方する漢方薬はおのずと違ってくるので注意が必要です。

【ステロイドを使わないことを前提にした漢方】
●消風散
 アトピーに多い治りにくい湿疹、とくに赤みを帯びてかゆみが激しく、患部が乾いていない、滲出液をともなうような湿疹に使います。暑くて湿気の多い時期に悪化しやすいタイプの皮膚疾患に効果があります。
●補中益気湯
 胃腸の働きを改善し、免疫力を高める効果の強い漢方薬です。虚弱体質、食欲不振、倦怠感の強い人に処方し、体力を補い、徐々に体質そのものを強くしていきます。とくに悪寒や寝汗があるときに著しい効果があります。
●安中散
 生ものや冷たいものをとりすぎてお腹が冷えて痛んだりお腹がはる場合、あるいは神経過敏やストレスなどからくる胃腸疾患のときなどに効果があります。自律神経の乱れを治し、胃腸機能の改善を助けます。
●十全大補湯
 病気が慢性化して全体的に体力が落ちてしまったときに、あらゆる不足を補ってくれるという意味からこの名がつきました。倦怠感、だるくて活力が出ない、精神的な疲労、生理不順などに効果があり、長びいたアトピーで心身ともに消耗している場合に最適な漢方薬です。とくに身体が冷えているときには、よく温めてくれます。
●麻子仁丸
 腸粘液のうるおいがなくなって、便秘気味でウサギのウンチのようにかたくコロコロした便の人に処方されます。こうした便も胃腸機能低下の表れですから、決してアトピーと無関係ではないのです。
●人参湯
 人参といっても、もちろん野菜の人参ではありません。胃腸が虚弱なために身体に余計な水分がたまった冷え性の人によく合います。胃腸機能の改善や利尿効果に優れ、血液循環をよくして身体を温めてくれます。皮膚の血流も増えて、皮膚が厚くなり、よい汗がかけるようになるのを助けます。
【ステロイドを使うことを前提にした漢方】
 患者さんのなかには、ステロイドでも炎症を抑えきれなくなった状態でクリニックでの治療を始める人がいます。その場合、私はステロイドを使いながら皮膚症状を緩和するタイプの漢方を処方し、併用します。
●十味敗毒湯
 炎症部位が傷になっていて、赤く腫れて、熱感、痛み、かゆみが強いときや、傷が化膿しているときなどに処方します。傷の治りをよくする抗生物質のような作用をもつといわれています。
●黄連解毒湯
 のぼせ気味で顔色が赤く、イライラしやすいタイプの人によく合う漢方薬で、赤くなった傷があるときに用います。毒素を身体の外に排泄する作用があります。
漢方で身体の不調がどう変わるのか?
 では、漢方薬を使いはじめると、具体的にどんな変化が現れてくるのでしょうか。
 前項の漢方薬リストをみていただくとおわかりのように、ほとんどの漢方が胃腸の機能を整えるためのものです。胃腸が弱く消化吸収能力が低下しているうちは、アトピーもなかなかよくなりません。なぜなら免疫力を強くするには、まず胃腸機能を改善し、消化・吸収を活発にして腸肝循環をよくし、肝臓の働きを高める必要があるからです。
 肝臓の働きを高めると、免疫細胞の構成物質であるたんぱく質の合成作用が高まるうえ、解毒作用や酵素活性も高まります。
 胃腸が弱いということは、すなわち免疫力が低下しているといってもいいすぎではありません。漢方薬は、胃腸の働きを活発にして、胃酸が十分に分泌されるように整えてくれます。するとまず、便の状態が変わってきます。水分のない乾燥した便しか出ない、あるいは慢性的に下痢が続いている、そんな症状が改善されてきます。早い人で1週間、遅い人でも3週間を過ぎると、効果が現れてくるでしょう。だからといって、すぐにアレルギーがなくなるわけではありませんが、食欲不振だった人は、自然と食欲がわいてくるのを感じ、冷え性、倦怠感も緩和されてくるはずです。
「なんとなく、以前より体調がよくなった」
 これが、漢方薬の効き方です。
 私のクリニックでは原則的に、抗アレルギー薬と漢方薬を併用して使います。さらに「ビタミン・ミネラル」療法をとりいれると、効果は倍増するでしょう。
解説●体質改善のつもりが症状悪化も!自己判断での食事療法にはご用心。
怖い! 自己流の食事療法の落とし穴
 アトピー治療に食事療法は必要不可欠なもの、そう思っている方が多いようです。
 確かに注意したほうがいいケースはありますが、やみくもに食事制限をしても、かえって栄養のバランスが偏ってしまうこともありますから注意しましょう。
 アトピー性皮膚炎の場合の食事療法には、大きく分けて2つのタイプがあります。一つ目はアレルゲンを避けるもの、二つ目は自然治癒力を引きだすものです。

(1) アレルゲンを避ける
 その食品を食べるとアナフィラキシーショック(重篤なアレルギー症状)を起こす、皮膚が著しく悪化するなどの症状をもっている人は、この種の食事療法が不可欠です。
 それ以外の人はあまり神経質になる必要のない場合もありますが、なかには意外な落とし穴にはまって、症状を悪化させてしまうケースもあります。食べてもすぐに反応は出ないけれど、密かにその食品がアレルゲンになっており、時間をおいて症状が出ることもあるからです。
 いずれにしても、自分で判断しないで、きちんと検査を受けることが大事です。たとえば、こんな例があります。
 コーヒー好きのAさんは、多いときには1日に5〜6杯のコーヒーを飲んでいました。胃への負担を心配してしばらくコーヒーをやめてみたところ、1カ月ほどしてアトピーの症状が消えてきたのです。
 また完治までそう遠くないと思われていたBさんですが、ある日突然、症状が悪化しました。くわしく聞いてみると、2週間ほど前から毎食後にキウイフルーツを食べるようになったといいます。ビタミンCをとろうとした結果でした。実は、キウイ、桃、マンゴー、イチゴなど特定の果物にアレルギー反応が出るケースは少なくないのです。
 やはり、症状がかなり改善していたCさんは、腸内環境を整えて便秘を改善しようと思い、毎日ヨーグルトを食べることにしました。ところが、急激に皮膚症状が悪化して、むくみまで出てきました。試しにヨーグルトをやめてみたところ、2週間ほどでむくみが引きはじめ、その後はまたたく間に症状が改善されたのです。
 最近はヨーグルトが健康によいということで積極的にとる人が増えていますが、私のクリニックの患者さんをみていると、必ずしもよいとはいえないようです。ヨーグルトがその人の健康にとってプラスになっているかどうかは、便秘が解消されたかどうかがポイントです。もし便秘が解消されていなければ、迷わずやめることをおすすめします。
 他にもトマトや牛肉など、思いもよらない食べ物がアレルゲンになる可能性があり、それらをすべて避けることは実際に不可能ですし、またそんな必要もありません。コーヒーも果物もヨーグルトも、ときどき食べるくらいであれば、問題ないでしょう。しかし毎日、毎食、1日に何回も、となるとアレルギー症状を引きおこすことがあります。
 身体によいとされるものでも特定の食べ物をとりすぎないことが大切です。そうすれば神経質になる必要はありません。また、症状が急に悪化した場合は食生活を見直し、頻繁に食べるようになったものがあれば一時中止して、様子をみてください。

(2) 自然治癒力を引きだす
 アトピーの食事療法では、アレルゲンを避けることも重要ですが、十分な栄養をとって免疫力・自然治癒力を高めることも必要です。
 たとえば、玄米菜食に代表されるように、腸を強くして免疫力を高める方法があります。
 摂取する栄養を抑えることで、腸の粘膜の栄養吸収能力を最大限に引きだそうというわけです。これも自然治癒力を高める食事療法です。
 しかし、こうした食事療法を行う場合にも、まず自分がこの療法に合う体質なのかどうかを、しっかりとみきわめる必要があります。そしてきちんとした指導のもとに行うことを、徹底してください。
 私の患者さんのなかでも、治りにくい人のなかには「以前、何らかの食事療法を行っていた」という人が多いのです。
 とくに自己流で食事療法を行っていた人には、栄養失調に陥って、筋肉や皮膚に弾力がなく十分な血流が行きわたらなくなっている、そんなタイプが多くみられます。
 このような場合には、漢方、正體、ビタミン・ミネラル療法を総動員して、食事も良質のたんぱく質と脂肪をとってもらうようにします。
 筋肉に弾力性が戻って、しっかりとしてくると皮膚症状も改善してきます。しかし、筋肉や皮膚に血流が行きわたらなくなってしまった人は、筋肉に弾力性が戻るまでの時間が長くかかります。
 とくに女性の場合、ダイエットなどで生理が止まるほどの食事療法をしてしまった人は、ホルモンのバランスも崩れているので、さらに時間がかかります。

 このような経験から、私は食事療法の際に、次の3点に注意するように指導しています。
(1) バランスよく食べる
 どんなに身体によいとされているものでも、同じものばかり続けて食べない。食べすぎない。
(2) 良質のたんぱく質をとる
 筋肉をつくる、肉・魚・豆などのたんぱく質をとる。
(3) 良質の脂質をとる
 酸化しにくい不飽和脂肪酸をとる。料理に使う油を、フラックス・オイル、ボラージ・オイル、ごま油、オリーブオイルなどのオイルに変えましょう。
 偏った食事療法よりも、良質の食品をバランスよく、これが大事です。
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