ステロイドは使わない!
アトピーはこうして治す 第2版
著者:丹羽正幸
序章------脱ステロイドを目指す!「統合医療」でアトピーは撃退できる!
アトピー性皮膚炎は皮膚だけの問題ではない!
「アトピー性皮膚炎は皮膚だけの問題ではない。自力でよい皮膚がつくれるような強い身体に改善すれば、アトピーは必ず完治する」
 これが私の基本的な考え方です。こういうと何か特殊な治療をするのではないか、と思われるかもしれません。
 しかし、アトピーの治療に魔法のような特効薬は、今のところみつかっていません。まえがきでも述べたように、アトピーは単純な皮膚の病気ではないからです。私にとってこれは、ごく自然な考え方なのです。
 ところが今までは、ステロイドで炎症やかゆみを治める「対症療法」や、症状が出ないようアレルゲンを取り除く「食事療法」などに重点がおかれていました。しかし、私はこう疑問を感じます。
 皮膚の症状を治すには、外側から薬を塗るだけでいいのでしょうか?
 アレルギーの出やすい食べ物をとらなければ、それで治ったことになるのでしょうか?
 炎症やかゆみなど症状が治まったら、アトピーが治ったと思っていいのでしょうか?
 西洋医学の立場からは、「それでOK」ということになります。
 しかし、ちょっとしたきっかけで症状がまた出てしまったとしたら? それが前以上にひどい症状だったとしたら、本当にアトピーは治ったといえるのでしょうか?
 このようなケースは、実際にいくらでもあります。
 私はアトピーで苦しむ方々のつらさを、日々、目の当たりにしています。かゆくてかゆくて眠ることもできない長い夜。泣き叫ぶ子どもの看病に疲れはてた母親。若いお嬢さんが、おしゃれもできず人目を避けるようにクリニックに駆けこんでくる——。
 アトピーは症状が顔などに出る病気だけに、学校や職場でいじめの対象になってしまう場合も少なくありません。
 何年もの間、または何十年もの間、アトピーに苦しみながら、そのアトピーと戦い、何軒もの病院を転々とした結果、完治をあきらめようとしている人もいます。でも、それで本当に後悔しないのでしょうか。
 アトピー性皮膚炎は、確かに複雑化し、治りにくくなっています。
 けれども方法さえ間違えなければ、アトピーは必ず「完治」するのです。
アトピー性皮膚炎が治りにくくなっている!
 私がアトピー治療に携わるなかで、アトピーの症状が複雑になってきたと実感したのは1990年代に入ってからでしたが、この頃から、アトピーの治療にスキンケアの指導やビタミン・ミネラル療法を組み合わせる必要性を感じはじめたのです。
 それまでの治療の基本は西洋薬と漢方薬、そして「正體」治療でした。「正體」は皆さんがご存じの「整体」に近い手技療法ですが、特殊な考えのもとに私が開発した方法なので正體と表現しています。
 しかし、どんなに漢方薬や正體などで注意深く治療をしても、石鹸ひとつ変えただけで、全身の皮膚が傷だらけになってしまったり、市販の化粧水はどれも使えなくなってしまった患者さんが増えるにつれ、考えが変わっていきました。
 当時、石鹸や化粧水などは、患者さんが使っていてよかったものや合わなかったものをいろいろもってきていただき、10年間で合計400種類以上はチェックしたと思います。その結果、石鹸や化粧水に含まれる防腐剤や人工香料が、思った以上に皮膚に損傷を与えることがわかり、正しいスキンケアで症状をやわらげる重要性を痛感しました。
 そして、ビタミン・ミネラル療法をとりいれるようになったのは92年ごろからです。ビタミン・ミネラルの効果は以前からわかっていましたが、きちんと効果を得られる高品質のサプリメントがなく、初めは思うように結果が出ませんでした。
 しかし96年ごろ、良質のサプリメントを開発することで、ビタミン・ミネラル療法を積極的に導入することができるようになりました。  それからは完治までの期間が飛躍的に短くなったのです。また漢方薬だけの治療結果と比べても、ビタミン・ミネラル療法を組み合わせることで、強くて美しい皮膚がつくられることもわかりました。
 このようにして私はこれまでに、症状も病因も複雑化してきたアトピーと対峙し、治りにくい患者さんと向き合い、どうしたら治るのか試行錯誤を重ねることで、現在のような治療方針をつくり上げてきました。目的は一貫して「アトピー性皮膚炎に負けない強い身体に改善する」ことです。
 現在、私のクリニックでは西洋薬と東洋の漢方薬を中心に、他の施設とも連携をはかり、一人ひとりの患者さんの症状や体質に合わせて、正體、ビタミン・ミネラル療法、スキンケアの指導などを組み合わせた治療を行っています。これらは、すべて経験と科学的根拠に基づいており、確かな効果を上げてきたものばかりです。
 近年、西洋医学を診断の基準とし、東洋医学に代表されるような代替医療(なかでも科学的根拠のあるもの)からも治療法を選択し、一人ひとりの患者さんに合った的確な治療を行う「統合医療」という概念が、新たに注目されはじめています。
 私が目指し、確信をもってつくりあげ、実践してきたアトピーの医療は、まさにこの「統合医療」だったのです。
「統合医療」の考え方でアトピーは治療できる!
 そもそも、皆さんは「統合医療」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。
 統合医療とは、西洋医学と西洋医学以外の医療を組み合わせた、医療の新しい考え方です。西洋医学以外の医療とは、東洋医学をはじめ各地の伝統医療やある種の食事療法、ビタミン・ミネラル療法などです。
 それらは総称して「代替医療」と呼ばれています。もともと西洋医学が登場する前は、代替医療は医療の中心的な役割を担っていました。
 西洋医学が「細胞」をみる医療であるなら、代替医療は「人間」をみる医療といってよいでしょう。病気の主である患者さんの体質、免疫力、薬に反応する力、治癒力、生命力など、患者さん自身の性質に着目した医療でもあります。
 西洋医学が発展するとともに、治療法も細分化・専門化され、逆に西洋医学だけでは治せない病気も増えてしまいました。ガンなどは、その代表といえます。
 一方、最近は数ある代替医療のなかでも、科学的に根拠のあるもの、現代医療としての条件を満たす方法のみが代替医療として選別されはじめています。そして、西洋医学に代わるものとしてだけでなく、同等の立場に立った医療として西洋医学と肩を並べる存在になっているのです。
 つまり「統合医療」とは、西洋医学と代替医療のよいところを選んで、治療法を組み立てる考え方のことなのです。
 アメリカでは10年ほど前から、医学部に統合医療を研究・実践する部門が設けられています。統合医療は、これから現代医療の中心的な考え方になっていくことでしょう。
 統合医療は、医療の東西を問わず西洋医学と代替医療を組み合わせ、一人ひとりの患者さんに合った治療を行う、いわばオーダーメイドの医療です。細胞レベルの視点で病気の原因をとらえて取り除き、同時に患者さんの身体の弱点を改善し体力をつける、これはまさにアトピー性皮膚炎の治療に最適な治療法ではないでしょうか。
体質改善でアトピーは完治する!
 それではここで、現在私が行っている4つの治療プログラムを簡単に紹介しましょう。くわしくは第2章で説明します。

(1) 漢方薬による治療(体質改善)
 治療の第一歩は問診です。目にみえる症状だけでなく、体力、体質、胃腸の状態などくわしく知ることによって、一人ひとりに適した漢方薬を処方します。

(2) ビタミン・ミネラル療法(皮膚に栄養を与える・皮膚の代謝を促す)
 皮膚の代謝を改善するために、症状に応じて、天然型ビタミン・ミネラルのサプリメントを処方します。処方されるサプリメントは、内臓に負担をかけず、消化吸収、代謝に優れた天然のものです。

(3) 正しいスキンケアの指導(皮膚の保護)
 日常生活での皮膚への刺激を軽減させるための指導を行います。間違ったスキンケアは皮膚の症状を悪化させますので、正しいスキンケアの知識を身につけていただきます。
 また、石鹸やクリームなどの身のまわりに使う生活用品や化粧品に、次のような皮膚に害のないものをとりいれるよう指導します。
 ○ 人工界面活性剤を含まない石鹸、シャンプー、リンス
 ○ 防腐剤を含まない天然保湿クリーム、天然オイル
 ○ 酸性水、アルカリ水

(4) 丹羽式正體(ゆがみを治す・皮膚の血流量を増加させる・免疫力を高める)
 丹羽式正體術を施すことによって、血流量を増加させ、皮脂の分泌を促します。これによって皮脂膜が強化されます。
 また筋肉が柔軟になることで、身体のゆがみ、ねじれが改善され、全身の血流や自律神経の伝達が正常になり、内臓の機能が高まります。
 さらに血流がよくなることで、水分と皮脂の混ざった「よい汗」がかけるようになります。「よい汗」はアレルギーの原因であるアレルゲンを寄せつけず、肌のうるおいを保つ最良の保湿剤となります。

 以上の4つのプログラムを中心に治療を行っていくと、早い人で2週間、遅い人でも3カ月で皮膚に変化がみられはじめます。そしてそれ以前に、便秘や冷え性などの身体の不調が改善されていきます。
 繰りかえしますが、この治療の目的は、よい皮膚をつくれるような強い身体に改善すること、いわば、皮膚がよくなる土台づくりです。ですから一足飛びに炎症が治まったり、いきなり皮膚がきれいになったりするわけではありません。
 しかし、体質の改善とともに、皮膚は着実に、根本から変わっていきます。ステロイドによる治療に比べると、かゆさとは長くつきあうことになりますが、他の方法では得られない強い身体と皮膚を取り戻すことができるのは間違いありません。
コラム●アトピー撃退の生活チェック【環境編】
 引きこもらずに、外に出かけるだけで症状が軽減!
 現代人の生活環境には、身体に悪影響を与える、さまざまな要素が充満しています。
 ハウスダスト、シックハウス症候群の原因となる接着剤や新建材、パソコンなどから発せられる電磁波、健康でいることのほうが難しいのではないかと思ってしまうほどです。
 だからといって、これらを完全にシャットアウトするのは無理というもの。山の中で、野宿をして暮らすのでもない限り、そんな生活は手に入りません。
 暮らしのなかで、できることは少ないかもしれませんが、まめに家の換気を行うことは大切です。
 夏にエアコンをかけっぱなしにしたり、冬に窓を閉めきって暖房をつけっぱなしにしたりするのはよくありません。
 オフィスで一日中机に座ったままという人は、ランチタイムを近くの公園でとるなど、外に出る時間をつくりましょう。
 子どもを積極的に外で遊ばせることも大切です。
 休日には街中に買い物に出るよりも、近くの公園でゆっくりと過ごす、単純ですがそれだけでアトピーの症状が軽くなることもあるのです。