ステロイドは使わない!
アトピーはこうして治す 第2版
著者:丹羽正幸
まえがき------アトピー性皮膚炎は、「皮膚」ではなく「身体」から治す!!
 私は35年ほど前から、アトピー性皮膚炎の治療の現場に携わってきました。そして、自分のクリニックを開いてからの15年間は、基本的にステロイド外用剤を用いずにアトピーを改善(寛解)させながら、最終的にはステロイドをまったく使わずに、生活できるようにもっていく治療法を模索してきました。
 この間、5300人にのぼる患者さんと向き合い、複雑・難治化するアトピー治療に携わるなかで、さまざまな経験を積み重ねてきました。その結果、免疫学的に特別な異常値を示す一部の方を除いて、ステロイドを使わなくてもアトピー性皮膚炎の治療は可能であるという結論に達したのです。
 簡単にいってしまえば、「アトピー性皮膚炎は、皮膚だけの問題ではない」ということです。つけ加えますと、「皮膚」に炎症やかゆみがあることが問題なのではなく、そのような皮膚しかつくれない「身体」に問題があるのです。つまり、ステロイドを使っても、アトピー性皮膚炎は決して完治しないということなのです。こういうと、現在、皮膚のかゆみで苦しんでいる方は落ちこんでしまうかもしれません。
 けれども、アトピーの身体は変えることができます。そして体質の改善は遠まわりのようにみえて、実はアトピー性皮膚炎を完治させるために不可欠なことなのです。
 本書では、アトピーに負けない強い身体を取り戻す方法を紹介しています。一読すれば必ず納得していただけるはずです。
 アトピーに限らず現代の西洋医学では、表面的な症状や局所的な病変にとらわれた対症療法に傾きがちでした。しかし一方で、局所的にみえる病気も全身状態の現れであるととらえる見方が、西洋医療のなかにも広がりつつあります。なかには、伝統医療や代替療法を含む䗪統合医療蟖を唱える医師も増えています。
 これらは、ガンや糖尿病などの生活習慣病に対する治療としては、すでにかなりの成果をあげていますが、本書で述べるアトピー治療もやはり、統合医療のひとつのかたちにほかなりません。おそらく、これからはどんな病気に対しても、全身の「身体」の状態をみたうえで治療にあたるよう変わっていくでしょう。
 そして私は、これまで多くの患者さんから授かった貴重な経験をもとに、ステロイドに頼らずにアトピー体質を改善する治療法を確立しました。この治療法を多くの皆さんに知っていただくことで、アトピーに悩んでいる方やその家族にとっての福音となれば幸いです。
第二版を出版するにあたって
 本書を出版してから、多くの患者さんと出会うことができました。ここ数年で増えているのは、タクロリムス軟膏を使ったがゆえに、症状が非常に複雑化した患者さんです。タクロリムス軟膏を使った皮膚はステロイドを使った皮膚以上に治療が困難で、治療までに長い時間がかかる人が少なくありません。そうした中で私は、体質を改善し、身体を強くし、その結果として皮膚を良くする治療法の必要性を、以前にも増して感じるようになりました。その治療法こそが統合医療です。アトピー性皮膚炎は、けっして皮膚だけの疾患ではありません。複雑化したアトピー性皮膚炎を治すには、統合医療こそ最も適していると確信しております。
 本書では、私が行う治療の全部をご紹介しているわけではありません。しかし、「身体を変える」という基本的なことをよく理解していただけると思います。
 2006年6月
 丹羽正幸