股関節で腹痛、不整脈を一秒で治す
著者:礒谷圭秀
まえがき------からだの左右のバランスが崩れると、人間は病気になる
「最近は、胃腸の調子が悪くってね」、あるいは「心臓の具合が良くないんだ。不整脈かも知れない」。私たちが、よく耳にする健康不安の声です。
 また、「ダイエットがうまくいかない」「冷え性がひどくて、指先の感覚がなくなってしまうほどなの」「更年期障害だと思うんだけど、からだの調子がすぐれない」などの悩みの声も少なくありません。
 そうした方々の多くは、「年齢的なものだから、しょうがない」あるいは「昔からの体質なんだよね」、さらには「遺伝的なものだから、あきらめている」と答えます。
 しかし、本当にそうした症状や不具合は“どうしようもない”ものなのでしょうか?
 今から60年以上前に私の父である礒谷公良が、そうしたものに対して一つの解決法を発見しました。
 それが礒谷式力学療法(以下、礒谷療法)で、その根本となるのが「背骨のゆがみが神経を圧迫して、さまざまな病気を発症させる」「背骨のゆがみを正すには、両足の長さを揃えること。そのためには、股関節の矯正が一番である」という理論です。
 そのことを発表すると、父は医学界からあらゆるバッシングを受けました。
 父は当時、京都で柔道整復師をしていました。京都薬学専門学校を卒業し、大阪医科大学で薬剤師として働いていた父が、叔父の整骨院を継いでいたのです。
 そこで、小児マヒの後遺症である跛行治療に取り組んでいたのですが、その時、足の長さとさまざまな疾病との重大な関係性を発見しました。詳しくは後述しますが、その理論は極めて明快で、単純なものです。
 ところが、当時の医学界にしてみれば、薬剤師出身の整復師が、難治性の病気の発症原因と根本的な治療法を突き止めたということは、沽券に関わることだったのでしょう。それは、すさまじいまでの攻撃だったと私は聞いています。
 現在では国内だけでなく、海外でも高く評価されている礒谷療法ですが、創始当時はこのように、眉に唾されるような存在だったわけです。
 さて、健康を害したり、体調不良を感じると、ほとんどの方はかかりつけの開業医のもとを訪れ、そこで治療できないと、紹介状を書いてもらって大学病院や専門医で受診されることでしょう。
 しかし、そこでも治せない、あるいは「どうして、こうなるのかわからない」と言われた経験はありませんか?
 医師たちは専門教育を受け、医療の現場に出るまでに厳しいカリキュラムを消化しています。そうした医師たちが、簡単にギブアップしたくない気持ちはわかりますが、最先端の医療技術でも、その原因を解明できない病気や、治せない疾病は間違いなく存在しているのです。
 病気は事故によるケガと同じように、「なにか」があったから、「こういう状態」になったと、必ず因果関係が存在しています。
 ある日、突然病気になったと思うのは本人だけで、その背景には必ず病気を引き起こす因子が隠れているものなのです。その多くは食生活や環境汚染、ストレス、睡眠不足などの生活習慣で、かつては「成人病」と呼ばれたガン、心疾患、脳血管疾患は現在では「生活習慣病」と呼称が変わっています。
 つまり、成人でなくとも生活習慣が悪ければ、誰でもそうした病気になってしまうということです。
 最近ではテレビの健康情報番組で、「食」と「健康」の関係が大きく取り上げられるようになりました。「○○を摂取すると、血液がサラサラになる」「○○は老化防止に効果がある」あるいは「○○を飲むと低下した免疫機能が向上する」などなど、そうした番組が放送されると、その翌日には番組で紹介された食品や商品が、スーパーや薬局で瞬く間に売り切れてしまうほどです。
 確かに「食」と「健康」の関係には大きなものがありますが、それがすべてではありません。それよりも、「病気」と「健康」の因果関係を「食」だけに求めることの危険性を感じ取っていただきたいのです。
 それは先に述べたように、一般の方だけでなく、医師にも当てはまります。胃を悪くして専門医にかかると、問診では決まってこう質問されるはずです。
「食事は肉類中心になっていませんか? 食物繊維を多く含む野菜をたくさん食べていますか? 日常生活にストレスはありませんか? コーヒーなどの刺激物は1日にどれぐらい摂取していますか? 喫煙習慣はありますか?」
 どの質問も間違いではありません。これらはすべて、胃をはじめとした消化器に悪影響を与えるものばかりだからです。
 しかし、そのどれにも当てはまらずに、胃の具合が悪いと答えたらどうなるでしょう。
 そうすると「遺伝的なものかも知れませんね」あるいは「原因不明ですが、なんとかよくなるように頑張ってみましょう」などの曖昧な言葉が返ってくるはずです。
 先に触れたように、病気になるのには必ずその原因になるものがあります。その原因がわからずに、遺伝的なものと決めつけるのは容易ですが、視点を変えて「そのほかの要因が、自分を病気にしたのではないか?」と一度、疑ってみてはいかがでしょうか?
 また、問診で聞かれたことに加えて、それ以外の“なにか”が病状を進行させ、悪化の速度を高めていることも考えてみるべきです。
「なるほど、先生のおっしゃるとおり、食生活や生活習慣が乱れていました。これからは先生の指示どおりに生活し、処方された薬もしっかりと飲むようにします」
 と、指導されたとおりに生活しても改善が見られない場合は、注意すべきでしょう。
 これは消化器疾患だけに限らず、心臓病や肥満、アレルギー疾患、更年期障害など、あらゆる疾患に関わることです。
 もちろん、礒谷療法は現代医学を否定するものではありません。
 高度に進んだ現代医学は、過去には難治とされてきた数多くの疾患を克服していますし、予防医学の面からも高い効果を上げているからです。
 しかし、現代医学もまた完ぺきではありません。エアポケットのように、どこかで見落としている部分があるのは事実なのです。
「礒谷療法なんて信じない。私は現代医学だけで、しっかりと完治した」
 という方もいらっしゃるでしょう。そうした方々は前述したように、病気の因果関係が生活習慣によるもので、それらを改善したために快方に向かわれたと判断することができます。
 そうした方々に、「礒谷療法は最高だから、こっちに来なさい」などと言うつもりもありません。
 また、「現代医学は信用できない。礒谷療法だけで病気を治したい」というのも困りものです。礒谷療法は後述するように、病気の原因となっている背骨のゆがみを正すのが目的で、決して魔法や魔術ではありません。
 人間のからだは機械仕掛けのからくり人形のように、「こっちの部品が壊れたから、交換してみよう」というような単純なものではないのです。それぞれの臓器や神経、筋肉や骨格が複雑に関係して、「健康」という状態を維持しているのです。
 本書を刊行する目的は、まさにここにあります。「消化器系の病気だから」「循環器系の病気だから」あるいは「神経系の病気だから」と、それらの関連性を考えずに切り離して認識していませんか?
 まず、ここからスタートしてください。本書をお読みになって、多くの方が「なるほど、そういうことも一理あるな」と思っていただければ幸いです。
 健康情報が氾濫する現代だからこそ、「食」イコール「健康」だけではなく、骨格のこと、骨盤のこと、両足の長さのことなどを読者の皆さんに知っていただきたく、ペンを取りました。
 最後までお読みいただけることを心から願って、本書の序文とさせていただきます。

礒谷圭秀