家庭でできる 超音波療法で視力が回復
著者:超音波療法取材チーム
第2章------眼の構造と機能を知れば  視力回復法の指針が見えてくる
全情報量の8割は眼からもたらされている
 まず、私たちには「五感」が備わっています。
 この五感とは「視覚」「聴覚」「嗅覚」「味覚」「触覚」の5つを指し、視覚はものを見ることによって得られる情報を、聴覚は音を聞いて得られる情報を、嗅覚は臭いで得られる情報を、味覚は口に含んで得られる情報を、触覚はものを触って得られる情報を脳に伝達しています。
 この中でもっとも重要とされるのが視覚で、全情報量の8割は視覚から得られるものだとされているのです。
 私たちがものを見て瞬時に判別するのは、それが大きいのか小さいのか、どのような形をしているのか、動いているのか止まっているのか、どのような色をしているのかなどで、その他の感覚よりも速く脳にその情報が伝えられます。
 昔から「百聞は一見に如かず」といわれるように、眼で見た情報はそれほど重要なものと認識されているのです。
 また眼は、見ているものの形状や動きを判別するだけでなく、向き合っている相手が自分にとって危険なものなのか、安全なものなのかも脳との情報のやり取りによって判別しています。
 いくら親しい関係の人間であっても喜怒哀楽は日々異なり、「顔色を窺う」という言葉があるように、相手の表情を窺い、その感情までも推し量ることができるのは眼が正常に機能していればこそなのです。

「見る」という機能には7つの要素がある
 つぎに「見る」という機能を考えていきましょう。
 視覚は、よくテレビカメラの機能に例えられます。まず、情報を収集する「眼」があり、その情報を伝達する「視神経」を通じて、これを映像化する「脳」が存在しています。つまり、眼はカメラであり、視神経はケーブル、脳は受像機であるという考えで、それぞれが正常に機能していなければ、見たものを情報として捉えることができません。
 視覚に障害があるからといって、単純に眼だけに問題があるとは断定できないのです。
 さて、視力と視野についてでは、もののかたちを捉える「形態視」と、色を捉える「色覚」、明るさを捉える「光覚」が必要で、さらに見える範囲を指す「視野」も重要になってきます。
 そして、両眼視機能は両眼で見ることで得られる情報のことで、「立体感」と「遠近感」のほか、左右の視線を同時に集中させて、正確な情報を脳へと伝達する「同時視」と、左右の眼で見た映像をひとつの映像にまとめる「融像」が機能しなければなりません。
 これをまとめると、視覚機能は以下の7点に絞られます。
 形態視
 色覚
 光覚
 視野
 立体感と遠近感
 同時視
 融像
 もともと私たちの眼は、左右ともに違った映像情報を脳へと送っています。
 つまり右眼で見る映像と左眼で見る映像は、その距離の関係から微妙に異なっているわけです。
 それを脳が的確に判断して、立体感や遠近感を知覚させるわけですが、それには左右の眼でものを捉える同時視が必要です。これを確認するために、よく用いられる方法があります。
 片眼を閉じて、両手の人差し指の指先を合わせようとすると、なかなかうまくいきません。これは両眼で見て、同時視によって遠近感が把握できている場合は簡単なのですが、片眼だけだと遠近感がつかめないことによります。
 また、腕を伸ばして指先を両眼で見詰めます。それをだんだん眉間に近づけていくと、眼は次第に「寄り目」になっていきます。このようにして、私たちは左右の眼を使った同時視によって立体感と遠近感をつかんでいるのです。
 一方、融像は左右の別々の眼から見た映像をひとつの像にまとめる機能で、テレビカメラでいえば、カメラ部分が2台あることになります。この融像機能がなければ、見ているものは二重に見えることになり、それをひとつの映像として認識しなければなりません。
 この機能は眼ではなく、脳がふたつの情報を処理して、ひとつに統合しているのです。

水晶体は人体に備わったレンズ
 それでは、カメラ部分である眼の構造について話を進めていきましょう。
 左ページのイラストにあるように、一般的に器官としての眼を指す場合、周囲の光やかたちを捉える「眼球」と視覚情報を脳に伝える「視神経」、さらにまぶたやまつ毛などの部分の「付属器官」を総称したものになります。
 眼球は成人で、直径が約24ミリ、重さ約7・5グラムとされており、かたちは真球ではなく前後にやや長くなっています。
 眼球の一番外側にあるのが強膜で、これが白目の部分になります。強膜そのものは白い不透明の膜で、その厚さは0・5〜1・0ミリ程度です。黒目の部分を覆っているのが角膜で、強膜と連続した構造になっています。
 眼に入ってきた光を屈折させて眼底に集めるのが角膜の最大の働きで、これが歪んでしまったり、あるいは傷ついたり、濁ったりすると、たちまち視力に影響がでてしまいます。つまり角膜とは眼の一番外側にあるレンズの働きをしているのです。
 つぎに、水晶体と毛様体を見ることにしましょう。
 水晶体は、角膜が一番目のレンズだとすれば二番目のレンズということになります。角膜と水晶体の大きな違いは、角膜の形状が不変であるのに対し、水晶体はその厚みを変化させることにあります。
 左ページのイラストにあるように、外から入ってきた光は一度角膜で屈折し、ついで水晶体で二度目の屈折をして網膜に投射されます。網膜ではこの二度にわたる屈折によって、ピントの合った映像が結ばれることになるのです。
 このピントの調整をしているのが二番目のレンズである水晶体で、イラストにあるように、近くを見るときは厚くなって屈折を強め、遠くを見るときは薄くなって屈折を弱めています。こうして網膜上で常にピントが合うように調整しているのですが、水晶体の機能が損なわれると、ピントが合わなくなってしまうわけです。
 これがいわゆる近視であり、遠視、乱視ということになります。
 水晶体そのものはゼリー状の物質で、中心部には「核」があり、その周囲に「水晶体皮質」、それを格納している「水晶体嚢」によって構成されているのです。
 また、人間は加齢にしたがって毛様体によるピント調節がうまくできなくなります。これが老視(老眼)で、老化現象の代表的なものとされています。
 さて、水晶体が厚くなったり薄くなったりするのは、水晶体そのものが自在に変化するものではありません。水晶体の周囲には、毛様体と呼ばれる筋肉を中心とした組織があります。
 そして、水晶体と毛様体の間にはチン小帯と呼ばれる線維組織があり、毛様体がそれを引っ張れば水晶体が薄くなり、緩めれば水晶体は厚くなります。つまり水晶体がレンズだとすれば、チン小帯を含む毛様体はそのレンズの強弱を調整する組織ということになるでしょうか。
 つぎに眼球全体の3分の2を占めているのが「硝子体」で、血管や神経はなく、99%の水分で構成されています。
 眼球はピンポン球のような形状をしていますが、これは硝子体によって内部からの圧力がかかっているためです。もし、硝子体がなければ眼球は丸い形状を保つことができなくなり、ぺしゃんこになってしまうでしょう。
 また「房水」は左ページのイラストにあるように、角膜と虹彩の間にある「前房」と虹彩と水晶体の間にある「後房」を満たす透明な液体で、血管の通っていない角膜や水晶体などに酸素と栄養を運ぶだけでなく、これらの組織で不要になった老廃物を回収する役割をしています。
 この房水は毛様体で分泌され、その役割を終えると角膜の隅にあるシュレム氏管から排出され、眼球の外にある血管に吸収されます。
 この排出がうまくいかないと、房水が眼球内で溜まって「眼圧」が高まってしまいます。その結果、引き起こされるのが「緑内障」ですが、そのことは項を変えて説明することにしましょう。

網膜は、カメラでいえばフィルムに相当する
 さて話を戻して、ものを見るメカニズムについて説明を続けていくことにしましょう。光は角膜から水晶体を経由して、「網膜」でピントを合わせます。
 網膜は左ページのイラストにあるように、「脈絡膜」の裏側にあります。この脈絡膜は水晶体と硝子体を包んでいる膜のことで、強膜と網膜の中心に位置しています。脈絡膜には無数の血管が走っており、虹彩や毛様体に酸素と栄養を運んでいます。
 この虹彩と毛様体、そして脈絡膜の3つは、それを合わせるとぶどうの房のように見えるため、ぶどう膜とも呼ばれています。
 カメラと人間の眼の構造は非常に似ていますが、脈絡膜はメラニン色素の定着によって黒褐色をしています。これはカメラでいうと暗幕のような働きで、瞳孔以外からの光が入ってこれないようになっているのです。
 そしてカメラの“絞り”に相当するのが虹彩で、人間の眼を正面から見ると、その中心にある黒い点が「瞳孔」で、その周囲の黒褐色の部分が虹彩になります。虹彩は周囲が暗いと瞳孔散大筋によって瞳孔を広げ、逆に周囲が明るいと瞳孔括約筋によって瞳孔を小さくして、入ってくる光の調節をしているのです。
 さて、網膜に話を戻しましょう。
 網膜は厚さ0・2ミリ弱ほどの薄い組織で、カメラでいえばフィルムに相当する部分です。この網膜には、ものの形状や色を見分ける「視細胞」が集中しており、その数は1億個以上ともいわれています。
 瞳孔の正面に当たる部分が「黄斑部」で、とくに解像力がすぐれており、その中心にあるのが「中心窩」です。
 脳につながっている視神経は黄斑部の脇にあり、視細胞でキャッチした視覚情報は網膜に張り巡らされた神経線維に伝達されます。神経線維は眼球と視神経の接合部である「視神経乳頭」に集約されて脳へと送られるのです。
 以上が、ものを見るメカニズムですが、カメラと同様にレンズや絞り、フィルムが正常に機能していないと、うまく「ものが見えない」ことがおわかりいただけたのではないでしょうか。
 カメラはいうまでもなく精密機械ですが、人間の眼もまた似たような精密構造にあるわけです。
 しかし、これを単純に考えれば、うまく機能していない部分を修復することができれば、再び眼ははっきりと見えることになるはずです。
 先にふれたように、近視の大部分は毛様体が正常に機能しないために、水晶体の厚みが調整できない、あるいは加齢によって水晶体が硬化してしまってピント調節ができなくなって老視となる  。そうした原因が大部分を占めています。
 こうしたものを屈折異常と呼びますが、その原因となっているものをなんらかの方法で取り除くことができないか、というのが本書で述べたいことなのです。
 超音波治療器による視力回復法はそこに着目して開発されたものですが、こうした障害によらない眼の疾患によって視力が損なわれている場合は、残念ながらその効果が期待できません。
 それは、たとえば「白内障」や「緑内障」あるいは「黄斑変性症」などの眼の疾患によるもののほか、ケガや糖尿病の合併症による「網膜裂孔」や「網膜剥離」、さらには角膜を損傷することによって視力が低下するだけでなく、視力を失ってしまうこともあります。
 そこで次項からは近視や老視、乱視のメカニズムのほか、簡単に眼の疾患について解説してみることにしましょう。

近視の大部分は治療が見込める屈折性近視
 近視は遠くのものを見るとき、網膜より前でピントを結ぶために、ものがぼやけて見える現象をいいます。
 遠くのものを見るためには水晶体を薄くしなければなりませんが、毛様体がうまく働かないために水晶体が厚いままになってしまっているのです。これを日常生活に当てはめてみると、小さな文字を虫眼鏡で見ていたとしましょう。
 それを虫眼鏡を使ったままで遠くを見るようなもので、当然のことながら遠くの風景はぼやけてしまいます。つまり、いつも目の前に虫眼鏡を当てたままで生活しているようなものなのです。
 これを「屈折性近視(単純近視)」といい、近視の大部分を占めています。
 一方、眼球の「眼軸長」が長いためにものがぼやけて見えるのが「軸性近視(病的近視)」で、イラストにあるように水晶体を薄くしても網膜の前でピントを結んでしまう症状をいいます。
 軸性近視は遺伝的要素が大きいのですが、小さい頃に近視になり、そのために眼球が正常に発達しないと屈折性近視から軸性近視に進行してしまう可能性があります。
 屈折性近視は毛様体の機能不全によることが多く、毛様体の働きを正常化すれば治すことのできる近視といえるでしょう。

遠視も屈折異常から引き起こされる
 つぎに遠視ですが、近視とは逆に網膜の後ろでピントが合ってしまう状態をいいます。
次ページのイラストにあるように、遠視には「屈折性遠視」と「軸性遠視」があり、屈折性遠視は水晶体が厚くならず、薄いままでいるために遠くも近くもぼやけて見える状態をいいます。
 よく勘違いされるのが、「遠視は遠いものがよく見えるだろう」というものですが、実際には遠い風景でも像が網膜の後ろで結ばれるため、遠くもうまく見えません。
 一般的には8〜10歳ぐらいまでは誰でも遠視気味で、成長にともなって解消されていきます。
 屈折性遠視もまた毛様体の機能異常によるものが大部分で、毛様体が正常に機能すれば、治療できる症状といえるでしょう。
 一方、軸性遠視は、軸性近視とは逆に眼軸長が短いために引き起こされる遠視で、これも遺伝的要因が大きいとされているのです。

水晶体が白く濁ってしまう白内障
 緑内障は、視神経が圧迫されることによって視野や視力が失われる恐ろしい病気です。
 先にふれたように、眼球の前房と後房に房水が満たされていますが、その排出口であるシュレム氏管が詰まってしまうと、房水が過剰に溜まってしまいます。このことによって、眼球内で房水がパンパンにふくれ上がってしまうのです。
 これが眼圧の上昇で、眼球の眼圧が高まれば眼球の後ろにある視神経の束(視神経乳頭)が圧縮されてしまいます。視神経は非常にデリケートな細胞で、圧迫を受け続けると壊死してしまいます。現代医学では視神経は再生することはないとされているため、壊死が進行すると最後には失明に至ってしまうのです。
 この緑内障には「慢性緑内障」と「急性緑内障」があり、前者は初期症状はほとんどありません。
 慢性緑内障は病状が進むと、眼が疲れたように感じたり、かすみや痛みを覚えます。電灯を見ると、ぼんやりと虹のようなものが見えるというケースも数多く報告されています。やがて進行すると、視野が欠ける視野欠損・狭窄がはじまり、視力の低下が顕著になります。
 一方、急性緑内障は、ある日突然に激しい眼の痛みや激しい頭痛、腹痛、嘔吐などの全身症状に見舞われます。
 そのため、頭痛が激しい場合は脳の病気、腹痛や嘔吐の場合は消化器の病気と間違いやすく、処置が遅くなってしまうことも少なくありません。
 処置が遅れれば眼圧はさらに高まり、ついには失明に至ってしまうのです。
 また、これまでは眼圧が上昇することによって引き起こされるとされていた緑内障ですが、最近では眼圧が正常なのになんらかの原因で視神経が圧迫されて損傷してしまう「正常眼圧緑内障」が増えてきました。
 その原因やメカニズムはまだ不明な点が多く、現代の難病とされているのですが、最近では緑内障の約6割がこの正常眼圧緑内障であるとされています。
 正常眼圧緑内障の場合、眼圧に問題はなく、自覚症状もほとんど見られないため、ある日突然に失明を自覚してしまうというケースも報告されています。
 緑内障の治療は、急性発作ではまず眼圧を下げる処置として、高浸透圧製剤の点滴やダイヤモックスなどの内服薬のほか、ピロカルピンなどの点眼薬が処方されますし、レーザー虹彩切開術が行われることもあります。

黄斑部が損傷して視力を奪う黄斑変性症
 黄斑変性症は前述したように、網膜の中心にある黄斑部に異常が発生して視力が失われる病気です。
 これも老化にともなって黄斑部に歪みや縮みが発生したり、新しい血管(新生血管)ができることで引き起こされます。前者を「萎縮型」、後者を「新生血管型」として分類していますが、その大部分を占めているのが新生血管型です。
 網膜の黄斑部に異変が生じると、強膜と網膜の中心に位置する脈絡膜から細い血管が伸びてきます。これが新生血管で、とても細く、破れやすいという特徴を持っているのです。そしてこれが破れると、そこから出血して黄斑部は円盤状に盛り上がり、網膜の機能が損なわれてしまいます。
 さらに病変部には新生血管が伸びるようになり、それがまた破れてと、徐々に広がっていくという恐ろしい眼の疾患なのです。
 最近では増加傾向にあり、50歳以上の男性に多く見られます。そうしたものは「加齢性黄斑変性症」と呼ばれているのですが、強度の近視が引きがねとなって発症するものもあり、若年であっても安心はできません。
 その治療法は新生血管に特殊な色素を注入し、非発熱性のレーザーを照射して化学反応で新生血管を破壊する「光線力学療法」が最近よく用いられています。

糖尿病の合併症による糖尿病網膜症は失明原因の第1位
 糖尿病はさまざまな合併症を引き起こしますが、眼に現れる代表的な疾患が糖尿病網膜症です。糖尿病患者の約5分の1は、糖尿病の悪化により失明、ないしは失明の一歩手前の状態であるとされています。
 そのため、成人の失明原因の第1位となっているのです。
 糖尿病網膜症は、糖尿病によって粘りを増した血液が網膜の毛細血管で詰まり、そこから出血することで引き起こされます。これを「眼底出血」といいますが、黄斑部が傷つかなければ痛みは感じず、違和感などの自覚症状はまったくありません。
 これが進行すると、網膜に新生血管が作られるようになります。新生血管は硝子体にも伸びていき、網膜と硝子体で新生血管が破裂し、その血液が大量だと失明に直結してしまいます。
 そのほか、網膜と硝子体の間に「増殖膜」と呼ばれる異常な膜ができることがあり、これが原因で「網膜剥離」を起こすこともあるのです。網膜剥離とはカメラのフィルムに相当する網膜が剥がれてしまうわけですから、視力の著しい低下と場合によっては失明に至ります。さらに糖尿病が原因となって、白内障や緑内障、眼筋のマヒなども発生することがあります。
 このように糖尿病は、糖尿病そのものよりその合併症によって大きく眼にダメージを与えてしまうのです。
 そのほか、高血圧や動脈硬化などによっても血管がもろくなり、網膜の血管が破れることで眼の疾患を引き起こすことがよく知られています。
 糖尿病を含め、こうした疾患は生活習慣病と呼ばれていますが、かつては成人病と呼ばれていたものです。それが成人ではなく、生活習慣という名称を与えられたのは、成人ばかりでなく、若年層にもこうした疾患が広がってきたからにほかなりません。
 問題を眼だけに捉われず、からだ全体の健康に気をつけることが、ひいては眼の健康に直結につながることをよく覚えておいてください。

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