股関節で腹痛、不整脈を一秒で治す
著者:礒谷圭秀
第2章------礒谷療法で、こんなによくなった!
両足の長さが揃っているかをチェックする
 さて、症例を紹介する前に股関節転位による大腿骨の変位角には、どのような種類があるかについて説明することにしましょう。
 前章で述べたように、大腿骨が外側に回っているのが「外旋」、逆に内側に回っているのが「内旋」になります。つぎに大腿骨が外側に開いているのが「外転」で、内側に入り込んでいるのが「内転」です。
 礒谷療法では大腿骨が「外旋」「外転」すればその足は長くなり、「内旋」「内転」すればその足は短くなると説明しています。物理的に大腿骨そのものの長さは違わないのに、股関節で変位角が発生すると結果的に長さが違ってくるという考えです。
 現代人のおよそ9割以上が股関節を変位角させていますが、日常生活ではほとんど気づいていません。
 それは股関節に知覚神経がないため、無理な姿勢で重いものを持ったり、足をねじったり、あるいは過激な運動などによって股関節が転位しても本人が気づかないからです。このような突発的なアクシデントだけでなく、日常のなにげない動作やクセが股関節の転位を引き起こすことも少なくありません。
 それほど股関節はデリケートな関節であり、誰でも日常的に転位が発生しているといえるでしょう。
 ところが、少しばかり股関節が転位し、両足の長さが違ってしまっても、骨盤がその差異を吸収してしまいます。つまり、長くなった足の側を高くし、短くなった足の側を低くすることで両足の長さを揃えてしまうのです。
 こうすることによって両足の長さが揃い、立ったり歩いたりを無理なくできるようになりますが、その分、骨盤が傾斜しています。骨盤が傾斜すると脊柱が傾くため、それを正すために脊柱は弯曲する。
 これが股関節転位から始まる脊柱のゆがみのメカニズムなのです。
 そこで、簡単な自己チェック法をお教えしましょう。
 まず、ご家族の方やお友だちに立ち合ってもらい、平坦な場所に仰向けになってください。それから背筋を伸ばし、肩の水平ラインと骨盤の水平ラインが平行になるようにします。その状態で気をつけの姿勢をして、かかとの内側を合わせるようにすると、両足の長さの違いを目で確認することができます。
 どうでしょう? 両足の長さは同じですか?
 多くの方は、微妙に足の長さが違っているはずです。「普段の生活では足の長さの違いなど考えたこともなかったのに、こんなにも違っているなんて」と、驚かれた方もいらっしゃるでしょう。
 これこそ論より証拠で、実際に試してみることです。
 つぎに、「どちらの足が長くなっているのか」あるいは「どちらの足が短くなっているか」を判断しなければなりません。
 股関節は単純なものではなく、「長くなっているから押し込めばいい」「短くなっているのなら引っ張ればいい」は、あまりにも危険です。そうした強制的な矯正はかえって悪い結果を生みますので注意してください。
足型を大別すると、9種類になる
 それでは、つぎに全身が映る大きな鏡の前に立ってみましょう。全身の力を抜いて、リラックスした状態で全身の状態をチェックします。
 実際の足型で分類すると、169種類にもなります。それほど人間の足型にはバリエーションがあり、それによって発生する症状や不具合が違ってくるのです。ここでは、礒谷療法で大別している9タイプについて説明することにします。

(1) L型……単純に左足が長いタイプで、О脚でもX脚でもないもの
(2) LO型……いわゆるガニ股と呼ばれるО脚で、左足だけでなく右足も外転していますが、左足の外転度が強く左足が長くなっているもの
(3) LX型……いわゆる内股と呼ばれるX脚で、左足だけでなく右足も内転していますが、右足の内転度が強いために右足が短く、左足が長くなっているもの
(4) R型……単純に右足が長いタイプで、О脚でもX脚でもないもの
(5) RO型……いわゆるガニ股と呼ばれるО脚で、右足だけでなく左足も外転していますが、右足の外転度が強く右足が長くなっているもの
(6) RX型……いわゆる内股と呼ばれるX脚で、右足だけでなく左足も内転していますが、左足の内転度が強いために左足が短く、右足が長くなっているもの
(7) S型……左右の足の長さがほぼ同じで、О脚でもX脚でもないもの
(8) SO型……左右の足の長さがほぼ同じで、О脚のもの
(9) SX型……左右の足の長さがほぼ同じで、X脚のもの

 L型とは英語のLeft(左)を、R型は同じくRight(右)を、S型はSame(同じ)を当てており、OはO脚、XはX脚を指します。S型は足の長さが同じだから正常というのではなく、L型とR型が混在している状態をいいます。
 さて、鏡に映ったあなたの足型は、どの型でしょうか?
足型によって、かかる病気が特定できる
 それぞれの足型によって、発生する障害や疾病、外観などが違ってきます。
 それは弯曲する脊柱の部位によって、影響を受ける臓器や組織が異なるためで、不思議なことに左足が長くなっている典型的なL型では消化器系や泌尿器系の疾病が、右足が長くなっている典型的なR型では呼吸器系や循環器系、免疫系の疾病が集中しています。
 次ページに対照表を示しますので、ご自身の足型と思い当たる症状や不具合、外観などと比べてみてください。
 脊柱のゆがみがもとで発生する疾病は、こうしたL型特有の疾病とR型特有の疾病が重複することがありません。つまり、典型的なL型で消化器系の疾病を抱える方は、R型特有の循環器系の疾病にはかからないということなのです。
 そのため、ご自身の立ち姿を鏡に映してみて、微妙な足型が判別できない場合は、前ページの表を参照することで、ご自身の足型を推測することも可能です。
 たとえば、「どうも胃腸の調子がよくない。普段から食生活には気をつけているし、それほどストレスも溜め込んでいないのに」という方は、足型がL型になっていることを疑ってみるべきです。
 前置きが長くなりました。それでは、実際に股関節転位を矯正することで重い疾病が治り、あるいは改善した症例を紹介することにしましょう。
1カ月で胃潰瘍が完治した!
 長年にわたって腰痛と胃潰瘍に苦しめられていたYさんという男性患者がいました。Yさんは当時75歳という高齢で、腰痛が悪化したために座骨神経痛を発症し、歩行困難となってしまったのです。整形外科に入院し、腰痛治療を行おうとしたところ、胃潰瘍が進行して吐血してしまいました。
 医師は手術を勧めましたが、年齢的なこともあってYさんは決心できません。そんなとき、礒谷療法の噂を聞いて治療院を訪ねてこられたのです。
 Yさんを診察したところ、左足が極端に長くなっています。そのことによって左側の骨盤が高くなり、腰椎と胸椎が弯曲していました。つまり典型的なL型だったのです。先に述べたように、L型は消化器系や泌尿器系の疾病になりがちで、Yさんも胃に関係する神経が圧迫されたために胃潰瘍を発症したものと推測されました。
 そこで、来院当日に股関節を矯正したところ、その日のうちに腰痛が軽くなりました。それから約1カ月、通院治療によってすっかり腰痛が消えてしまったのです。
 同時に胃の具合もよくなり、1カ月後の検査では胃潰瘍が完治していました。医師から「手術の必要がなくなりました」とYさんは告げられたそうです。
 その後も腰痛、胃潰瘍ともに再発することなく、Yさんは元気に過ごされています。
 Yさんは「もし、あのとき手術を受けていたら、間違いなく寿命は縮まっただろう」とおっしゃっています。
 一般の方にはなんとも不思議な話でしょうが、こうした症例は無数にあります。「なんとなく腰が重いような気がする」「胃の具合がよくない」。こうした症状がセットになっている場合は股関節転位を疑ってみてください。
 股関節に異常があって脊椎がゆがみ、それがもとで神経を圧迫。そこに関係する臓器が機能不全になって発症する疾病は、薬や手術では治りません。一時的に快方に向かったとしても、それは根本的な治療にはならず、やがて再発することになるのです。
不整脈が一瞬で解消された!
 つぎに、不整脈で苦しんでおられたXさんの症例を紹介することにしましょう。
 Xさんは中年の女性で腰痛と不整脈を併発されていました。この症例は私の父である公良が治療したものですが、脚型を診てみると右足が長い典型的なR型だったそうです。
 R型は循環器系の疾病が多く、Xさんの症状とぴったりと当てはまります。Xさんは股関節が変位角したために骨盤が傾き、胸椎と頚椎が弯曲していました。
 公良はXさんの許可を得て、ある実験を行いました。Xさんのからだにコードをつなぎ、心電図を計測します。そのうえで、股関節を矯正することで不整脈が治るかという実験です。その実験には安全を期するため、専門の内科医が立ち合いました。
 まず、仰向けになってベッドに横たわるXさんの心臓の動きを見ると、心電図の針は不規則な波形を描いています。明らかな不整脈の症状です。そこで、公良はXさんに右ヒザを抱えるよう指示します。
 公良はXさんのヒザに手を当て、股関節の転位を矯正。さらに、礒谷療法独自の救急法をXさんに施しました。すると、それまで乱れた波形を描いていた心電図が正常な波形を描いたのです。
 実験を見守っていた内科医が、うなるように「あっ、治りましたね」とつぶやきました。これはビデオに収録され、現在はDVDに変換されています。
 いくら股関節を矯正すれば心臓病が治るといっても一般の方は信じてはくれません。ところが、このDVDをお見せすると、皆さんが納得してくれるのです。まさに論より証拠で、たとえXさんが「心臓の具合がよくなったように感じる」といっても、それは本人の体感によるもので、疑いの眼を向ければ“お芝居”に見えることでしょう。
 ところが、心電図は誤魔化しがききません。心電図の波形を見ると、礒谷療法の救急法によって、間違いない不整脈が解消してしまったことを証明しています。
 それも長時間にわたる手術や矯正法ではなく、まさに1秒にも満たない「一瞬」で、不整脈を治療したことになります。
 この映像は、礒谷療法の理論を裏づける貴重なデータとして大切に保存されているものです。
女性特有の冷え性と不眠症が1時間で改善!
 女性に多い冷え性や不眠症ですが、これも股関節の転位が影響しています。
 そこで、東京・中野にある礒谷療法総本部で施術したお二人の改善例を紹介することにしましょう。
 まずPさん(45歳)ですが、Pさんは長年にわたって冷え性に悩まされてきました。冬季になると指先の感覚がなくなってしまうほどで、夏季でも「指先が冷たい」と、いつも漏らしていたといいます。
 サーモグラフィでPさんの足を計測したところ、映像が濃い青色に映ります。サーモグラフィは温度が高いとオレンジ色や赤に、温度が低いと青や紺色に映るのですが、実際にPさんの足先の温度を測ってみると、27度という低いものでした。
 そこで礒谷療法による脚結束法を試してみると、結束後約1時間で足先の温度が33度にまで上昇したのです。
 つぎにQさん(54歳)ですが、Qさんもまた重い不眠症に悩まされているといいます。Pさんと同様に足先の温度をサーモグラフィで測ってみると、これもまた29度と低い数値を示しました。
 Qさんにも脚結束法を施し、1時間を経過して再びサーモグラフィで計測したところ、足先の温度が33度にまで上昇しました。
 Pさんは定型的な冷え性で、Qさんは冷え性からくる不眠症だったわけですが、わずか1時間の施術で、お二人とも驚くべき効果を上げたのです。ともに股関節が転位し、下肢の神経が圧迫されたために冷え性となっていましたが、股関節を矯正するとこのように劇的な変化をもたらすのです。
高血圧症も股関節矯正で治った!
 心筋梗塞や脳卒中の原因になる高血圧も、股関節を矯正することで、その症状を改善することができます。
 股関節と血圧にどんな関係があるのかと、疑問に思われる方もいらっしゃるでしょうが、本項では長年重い高血圧症に苦しんでおられたTさんの症例を紹介することにしましょう。
 Tさんは上が250、下が150という典型的な高血圧症で、日頃から降圧剤を服用していました。食事にも気をつけ、過剰な運動を控えストレスを溜め込まないなどの医師の指導に従って生活していましたが、一向に症状は改善されません。
 高血圧特有の頭痛や肩こり、腰痛、足の痛みに悩まされ、いつも憂鬱な気分で生活していたといいます。
 そんなTさんが、知人の紹介で礒谷療法総本部を訪ねてこられました。初診時にTさんの足型を診断したところ、明らかに右足が長いR型でした。股関節が転位して脊柱が弯曲し、心臓や循環器に関係する神経を圧迫していたのです。
 私が「股関節を矯正して血圧を下げますから、血圧が下がったら医師と相談して降圧剤を飲むのを止めてください。それに、食べ物は適量であればなにを食べてもいいですよ」と言うと、不思議そうな顔をします。
 それはそうでしょう。今まで降圧剤が手放せなかったわけですし、食事もコレステロール値の低いものばかりを選んできておられたのですから当然の反応です。私の言葉に対して半信半疑になるのは当たり前です。
 ところが、1カ月間、股関節を矯正して脊柱を正常な状態に戻すと、血圧は上が130に、下が85までに下がってしまったのです。Tさんが目を丸くしたのはいうまでもありません。
 その後、股関節が悪い角度に戻らないように、5カ月にわたって筋肉の矯正治療をしたところ、高血圧症が完治してしまいました。降圧剤は必要がなくなり、食事も以前のように肉類が食べられるようになったとTさんは喜んでおられます。
 Tさんの主治医も首をひねるだけで、どうして高血圧症が治ってしまったのか、理解できなかったそうです。
 このように現代医学では、股関節と高血圧症の関係は認めていません。ところが、礒谷療法では脊髄神経と臓器の深い関係を創業期から研究しており、重度の高血圧症でも短い期間で完治させることができるのです。
難病中の難病であるリー脳症も改善
 つぎに、リー脳症という珍しい疾病に罹ってしまったY子ちゃんの症例を紹介することにしましょう。
 リー脳症は、リー症候群とも亜急性壊死脳症とも呼ばれる難病で、主に乳幼児が罹る亜急性、進行性の脳疾患です。初期は精神運動機能の発達の遅れという症状が現れ、ついには哺乳困難、歩行困難、さらには視力低下や難聴、マヒなどの症状が進行します。
 Y子ちゃんは生後5カ月で、お母さんに抱かれて礒谷療法総本部を訪ねてきました。
 お母さんの話を聞くと、Y子ちゃんの異常を感じて国立病院で診てもらったところ、リー脳症と診断されたと言います。病院では治癒の見込みがないということで、「とりあえず入院して様子を見ましょう」と言われたそうです。
 そこで入院はしてみたものの、治癒の見込みはないと宣言されたわけですから、それから先、Y子ちゃんは検査や診療のたびにつらい思いをすることになります。治るならともかく、治らないと宣言されて入院するのはY子ちゃんが可哀相だと、病院には1日だけ入院して自宅に帰ったそうです。
 幸いなことに、Y子ちゃんのお母さんが礒谷公良の著書である『予防医学』を読んでおられました。脳性小児マヒやてんかんなど、現代医学では治せない難病を薬や手術を用いずに手技だけで治すという礒谷療法に、「Y子ちゃんを治せるのは、これしかない」と思われたそうです。
 私がY子ちゃんを診たところ、首がグラグラしており、目は半分ほどつぶった状態でした。その視線もうつろで、首の後ろに手をやると、右側に筋肉のしこりがあります。仰向けに寝かせて足型を診ると、左の股関節が外に開いていて左足が長くなっていました。つまり、Y子ちゃんは典型的なL型だったのです。
 この時、私はY子ちゃんのお母さんに「治ります」とは断言しませんでした。
 なにしろリー脳症は、現代医学でも治せない難病中の難病です。軽はずみに「治せる」と言えなかったのです。
 そこで、お二人に総本部近くの宿泊施設に泊まっていただき、約1カ月にわたって治療を行うことにしました。当面の治療目標は手足に力が出て、首がすわるようになることとし、毎日午前中に1回、午後に1回の股関節矯正を行いました。
 治療を始めてから2日目で、Y子ちゃんの視点が定まるようになってきました。1週間後には声が出るようになり、表情にも変化が見て取れます。
 矯正を始めてからY子ちゃんは機嫌がよくなり、時折、可愛い笑顔を見せてくれます。
 そして3週間ほど経過した頃に、Y子ちゃんのお母さんは礒谷療法の勉強をするようになりました。やがていつかは総本部を離れて日常生活に戻るわけですから、自宅でできる矯正法をマスターすべきだとのアドバイスがスタッフからあったためです。
 1カ月が過ぎ、すっかり元気になったY子ちゃんは首がすわるようになりました。お二人は自宅に帰られ、それからは自宅での矯正になったのですが、退院から2年たって「パパ、ママと片言が話せるようになりました」とお母さんが報告してくれたのです。
 もちろん、難病中の難病であるリー脳症であるため、今後の経過を診てみないとよくなった、あるいは改善したとはいえません。しかし、お母さんは「礒谷療法を試してみて本当によかった。もし、礒谷療法と出会っていなければ、治る見込みのないまま検査や治療を受けていたでしょう」とおっしゃいます。
 リー脳症と脊髄神経、さらには股関節がどのように関係しているのかは、私にもわかりません。しかし、Y子ちゃんの足型は典型的なL型であり、それを矯正することで改善効果が見られたということは間違いのないことなのです。
手術が必要といわれた椎間板ヘルニアが完治!
 そのほか、腰痛や肩こり、椎間板ヘルニアなどでも礒谷療法は確実に効果を発揮します。こうしたものは脊柱のゆがみが原因で発生することが多いため、礒谷療法がもっとも得意としている分野といえるでしょう。
 しかし、脊柱のゆがみという慢性的な原因ではなく、事故やケガなどで突発的に発生したものに効果はあるのだろうかという疑問が浮かぶはずです。
 そこで、U君の症例を紹介しておくことにしましょう。
 U君は高校2年生のときに、左臀部に強い痛みを感じました。それは通学途中のことで、自転車をこいでいるときに、急に発症してしまったといいます。しばらくして左足がしびれ始め、慌ててU君は整形外科病院に駆け込みました。
 病院での診断は座骨神経痛とのことで、試しに神経ブロック注射を打って、牽引も行ったといいます。
 ところが、痛みは引くどころか、ますますひどくなります。そこで、MRI検査を受けると、今度は椎間板ヘルニアと診断されてしまったのです。
 座骨神経は腰から臀部、さらに太腿から足に向かって伸びる神経で、人体のなかではもっとも太くて長い神経です。座骨神経痛はお年寄りに多い疾患で、その多くは前述した脊柱管が狭くなり、神経が圧迫されて発症するケースが目立ちます。
 また、椎間板ヘルニアと合併する場合もあり、U君はこの座骨神経痛と椎間板ヘルニアを合併させてしまったのです。
 U君の主治医は「完治するには手術しかない」と言ったそうです。U君にしてみれば、手術に対する恐怖よりも、ショックのほうが大きかったと後に語っていました。
 それはそうでしょう。U君はまだ高校2年生です。「人生はこれから」と思っているときに、人体の要である腰を手術するというのですから、目の前が真っ暗になったことでしょう。
 そんなとき、U君のお父さんのお知り合いが偶然にも礒谷療法で治療を受けていたのです。その方から礒谷療法の評判を聞いて、U君とご家族はなんとかなるかも知れないと思って総本部に訪ねてこられました。
 最初にU君を診たときは、立っているのが精一杯という状態で、とても歩けるような状態ではありませんでした。そこで、慎重に股関節を矯正し、足の長さを揃えていきました。
 毎日通院していただき、2週間後には車椅子に乗れるまでに回復しました。それまではご両親の付き添いでタクシー通院だったものが、劇的な回復です。1カ月後には車椅子を杖代わりにして、自分の足で歩けるようになりました。
 1カ月半後には痛みやしびれは多少残っているものの、自分の足でしっかりと立ち、歩けるようになるまで回復したのです。
 その後、座骨神経痛と椎間板ヘルニアは完治し、U君は学校へと戻っていきました。
 U君のように、日常のなにげない動作で脊柱に負担がかかり、脊柱管が狭くなって神経を圧迫したり、椎間板ヘルニアを引き起こしてしまうことがあります。
 現代医学では、それらが重い場合に手術という手法で治そうとしますが、股関節を矯正するだけで、このように奇跡的な回復を遂げることがあるのです。
花粉症も股関節を矯正すればよくなる
 症例ということでは、それこそ数えきれないほどの例があり、父・公良の代から私に至るまで、その数は200万人以上にものぼります。紙数の関係で、主だった症例のみを紹介しましたが、これまでにありとあらゆる病気を治療してきた実績が礒谷療法にはあります。  万病を治すというと、眉に唾されるかも知れませんが、股関節を矯正して脊柱を正常な状態にすることは、あらゆる病気に対して有効であることは間違いありません。
 つまり股関節を矯正するということは、単に足の長さを揃えるという「形状」の問題ではなく、先に述べたように全身の神経のターミナルである脊髄の働きを正常化させるということなのです。
 そこで、珍しい症例を最後に紹介しておくことにしましょう。
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 毎年春になると、花粉症に悩まされ、とても辛い思いをしてきました。
 それが、屈伸運動をするようになってから、驚くほど症状が軽くなりました。ときどきくしゃみが出る程度で、いままでの辛さと比べたら、比べものにならないほど幸せです。鼻水が止まり、からだのだるさもなくなります。とても感謝しています。
 最近は、毎日30分ほどしか運動をしていないのですが、3年前は4〜5時間ほど毎日ひたすら屈伸やヒザ抱えをし続けていました。きっとその頑張りが体質を変えてくれたような気がします。
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 この方はОさんという30歳の女性の方ですが、長年苦しんでこられた花粉症が礒谷療法によって改善されたと感謝のお手紙を寄せてくださいました。
 花粉症は免疫機能が過剰に反応して引き起こされる病気ですが、こうした病気にも礒谷療法、つまりは股関節の矯正は有効なのです。
 また、股関節の転位による脊柱のゆがみは視力にまで影響します。
 ある陶芸家の先生のケースを紹介しましょう。その先生は職業柄、毎日足を開いてろくろを回してしました。一日中、そうした姿勢で座っていたために、ついには極端なО脚になってしまったのです。
 そして外反母趾になり両膝関節炎、両足筋力低下、両足のむくみ、腰痛、だるさ、冷え性に悩まされるようになりました。О脚は不整脈、狭心症、心筋梗塞、心不全、ぜんそく・セキ・タン、呼吸困難になりやすい足型ですが、この先生はある日突然、失明してしまったのです。
 股関節の転位が脊柱をねじれさせ、ついには視神経にまで影響をおよぼして失明に至ったケースだといえます。
 さらに、驚くべき事例を取り上げてみましょう。
 X脚で全盲の青年がいました。彼は度胸を試すためにバンジージャンプにチャレンジしたのですが、飛び終わった後で目が見えるようになったというのです。
 バンジージャンプはご存じのとおり、足首をきつくしばってジャンプします。最下点に達したとき、全体重が足首にかかり、股関節が牽引されてX脚が伸びました。その瞬間に全盲だった青年の目が光を取り戻したのです。
 もちろん、むやみに足を牽引しても同じ効果は得られません。無理な牽引は心臓発作を引き起こすこともありますので注意が必要ですが、この事例からも股関節と視力との因果関係の深さはご理解いただけたと思います。
“対症療法”では限界がある
 これまで、さまざまな症例や事例を紹介してきましたが、共通して言えることは股関節の矯正はおしなべて“対症療法”ではないということです。
 ある方が「胃の具合が悪いから、礒谷療法で治したい」と通院を始めたとします。しばらくすると、決まって「胃の具合はよくなったし、腰痛や肩こりも治ってしまった」とおっしゃいます。
 つまり、痛みを訴えているのは胃であっても、股関節が転位して脊柱がゆがんでいると、ほかにも必ず不具合が生じているものなのです。
 そうした脊柱のゆがみを正常にすることで、胃だけでなく、からだのあらゆる部分が正常に機能してきます。その結果、これまで感じていたからだの不具合がきれいに拭い去られたように消えてしまうのです。
 このことは、礒谷療法の理論を理解すれば不思議なことではありません。
 これまで述べてきたように、脊柱に収まっている脊髄は全身の神経ターミナルです。その脊柱がゆがんでしまえば、脊髄につながる臓器や器官、筋肉などが悪影響を受けて、必ずからだに異常が発生します。
 礒谷療法とは、こうした脊柱のゆがみを正常にする効果的な療法であり、理論であることを今一度ご理解いただきたいと思います。
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