成功哲学に学ぶ 健康の法則
著者:山口天祐
第3章------笑いを忘れない
笑ってみようか!
 理屈を言う前に、素人考えで笑いが持つ効能というものを考えてみました。笑うとこんなことになる、ということですな。
 (1)周囲を和やかにする
 (2)楽しい気分になる
 (3)歌や踊りをしたくなる
 (4)嫌なことを忘れる
 (5)お腹が空く
 他にもたくさんあるでしょうが、どれを見てもいいことばかりでしょう。私は笑うことは健康にとてもいい効果を招くと考えています。もちろん病床にある人が笑うことができるようになれば、治癒が近いはずです。
 笑いと健康との関係については、医学の専門家もたくさん研究報告を出しています。前著でも遺伝子工学の村上和雄博士が吉本興業のお笑いを糖尿病患者さんに聞かせたら、大笑いをした後で血糖値が驚くほど下がった、という実験データがあることをお話ししています。
 笑うことはすごいですよ。ガンの抑制遺伝子のいくつかにスイッチが入り、ガン発生を抑制したり、ガンの進行を止めたりする働きもあるというのですから。伊丹仁朗さんという医師が証明していますね。笑うということはなぜ人間だけに許された行為なのでしょうか。この辺を考えてみることが大事ですね。
 笑うということは顔の表情筋が発達している人間だからできることで、動物だってきっとおかしなことや、愉快なことを感じ取る心を持っているものがあると思うんです。たとえばチンパンジーやサルの仲間には、怒ったり、笑うような仕草を見せたりするものがいますから。犬だって笑っているのかなと思うときがありますよ。
 笑いますと、体にさまざまな変化が現れます。皆さん気が付かなくても、言われてみると「ああ、そうか」と思うことがあります。たとえば運動して腹筋が痛いときに笑わせられると、お腹が痛くてたまらない。これは笑うと腹筋をたくさん使うということの証明になりますね。
 そういえば笑いを文字に表すと「ハ」行になりますね。「ハ、ハ、ハ」「フ、フ、フ」「ホ、ホ、ホ」「へへへ」「ヒヒヒ」など、それぞれ笑い方の状況まで目に浮かんでくる。とくに大笑いするときは「ハ、ハ、ハ」とハの連続ですわね。頭にワがついて「ワハ、ハ」ということもある。
 自分でこのハ、ハ、ハ、とやってみますとね、喉の奥が大きく開いて体の中から空気を出しているのが分かりますよ。
 お腹の空気を出すということは、必ずそれだけの酸素を吸っているに違いない。
 「笑いすぎて苦しい」
というのは、空気を出し過ぎて酸素を吸えないときです。
 この笑う状態というのは無意識に腹式呼吸をしているってことですよ。なかなか自分から意識して腹式呼吸をするのは難しいですが、大声を出して笑えば、簡単に腹式呼吸になります。
 「年頃の女の子が、大口開けて笑うんじゃない!」
などと、昔はカミナリ親父から叱られたものですが、今じゃ健康に笑いは欠かせないものになっている。
 腹式呼吸をすると、お腹にある横隔膜が上下して内臓に刺激を与えるといいます。内臓の筋肉というのは、不随意筋と言いまして自分の意志で動かすことができない筋肉です。腕や足、あるいは腹筋などは自分で曲げようと思えばそのように動きますけど、腸を動かそうと思ったって動きやしません。胃もそうですし、腎臓や肝臓などもどこにあるのかさえ分からない。
 そこで腹筋や横隔膜を動かすことによって、腹腔の内圧を変えて間接的に内臓を動かすことができるわけです。内臓を動かせば、機能も活性化するし、内蔵に血液の出入りする量が多くなる。つまり血流が盛んになるわけでしょう。臓器の血流が盛んになれば、それだけ酸素も養分も運ばれますから、元気になる。
 だいたい笑ったときの酸素の摂取量は、普通の呼吸の3〜4倍だそうですよ。深呼吸よりも多くて倍くらいの酸素が取り込まれるらしいです。
 笑った顔というのは、顔をくしゃくしゃにしていい男も美人も台無しになる。だけど、つんと澄ました顔よりも何倍か親しみも湧くし、魅力的ですよね。ミラー効果というものがありまして、笑っている人の顔を見ると関係ない自分も思わず笑顔になったり、ときには声を出して笑ったりする。つまりよく笑う人は、周囲を明るく、和やかにする名人ということになりますな。

笑いの効果
 効果といってもいろいろです。今、述べたようなことも笑いの効果ですが、やはり病気には笑いがいいようですよ。  「笑って治るなら医者は要らない」
 たしかに、笑っただけじゃ病気は治らない。それは理屈ですね。笑って病気が治るなら落語家は引っ張りだこのはず。
 じゃ、苦虫を噛みつぶしていたらいいのか、ということでもない。笑いによって生ずるちょっとした変化でも、続けることによって実は大きな変化を得ることができるのです。これはとくに人間の生理を見るとそう思えます。逆の考え方が生活習慣病です。1回の食事で少しくらい脂の多いものを食べてもそう直ぐにどう体調を崩すというものではないでしょう。習慣が体を変えていくということですな。
 だから笑いもそうです。「笑うだけで病気が治る」とは誰も言っていない。この辺を言い出すと揚げ足取りになります。笑いが病気にいいというと、笑いは薬か?とねじ込んでくる人がいる。世の中いろいろな人がいますな。
 ところで笑いの効果です。笑いは薬ではありません。当たり前のことですが、世の中当たり前が通じないときがあります。薬ではありませんが、笑いでよく言われる効能は、一つには先ほどの深呼吸と酸素摂取量の増加ということがあります。私たちの体はなにしろ酸素がなくては始まりません。酸素は60兆個の細胞にとって欠かせないエネルギー源です。もちろん血流増加によって栄養供給が盛んになって、とくに脳細胞がよく働くようになります。自律神経失調症やパニック障害の方々などは深呼吸がいいと言われます。笑いはずっと心を軽くしてくれます。
 病気の方は自分では呼吸をしているつもりでも、呼吸が浅くなって十分な酸素が取り入れられていないのと違いますか? ですから声を出して笑うと有酸素運動と同じ効果が体を動かさずに得られますから、血中の糖や脂肪の燃焼を促進しますので、血液もきれいになります。
 それとやはり免疫細胞との関わりが笑いの効果にはあるようですよ。日本で初めて笑いの医学的効果を証明したのは医師の伊丹仁朗さんという方だそうですが、この方は「ユーモア・スピーチ」というものをつくった。身の回りの出来事を素材にして1週間に1つ、面白い話を書きとめながら、家族の前や学習会で話すという簡単なもの。これでも続けると効果が出てくるようです。
 楽しく笑うことで血液中のNK細胞が活性化して、治癒力が強まるということを利用したものですね。さらに、こうしてユーモアの題材を探したり、お話をしたりということが、病気によって自分の内へ内へと向かう心を、外の世界に向かうように意識改革をしていくということにつながる結果になったそうです。
 笑いで病気が治るというのは一つのキャッチ的な表現ですが、それを真に受けて「本当に病気が治った、治らない」と目くじらを立てるのは、笑いの真髄を理解できない人と違いますか。笑いには数え切れない効果があるのですよ。

笑って戦争はできない
 先ほどからくどいくらい述べているように、笑いというのは自分だけの効果に留まらず、周囲の人を楽しくしますし、平和に通ずるような人々との心の通いを感じさせます。大声で笑いながら戦争などできるものじゃありませんよ。鉄砲を撃つ人の顔は恐らく引きつるくらい、怖い顔をしているのでしょう。  笑いが戦いに不向きなのはよく考えてみると分かりますよ。スポーツ・ゲームも一種の戦いですけれど、ニヤニヤして戦っていればコーチや監督からこっぴどく怒られます。「真剣にやれ!」とね。笑っているときっていうのは、必ず息を吐いています。前述のハ、ハ、ハもヒ、ヒ、ヒもこれ全部呼気の音ですよ、息を吐いているときに出す音ですね。吸気の音ではない。
 変わった人もいるから、明石家さんまさんのように息を吸いながら笑う人もいる。しかし、まあ一般的にはほとんどの人は声に出して笑う場合は息を吐いています。このことはとても大事なことで、この状態ですと力が入りませんので喧嘩をしたり、戦いをしたりする体勢になれないんですね。喧嘩をするときというのは、息を詰めて全身の血流を止め、ときには髪の毛や肌の毛が立つくらい筋肉を緊張させます。
 筋肉を硬直させると固くなって、少々の打撃をくらっても内部に影響を与えないから肉の鎧になる。結構、筋肉を鍛えると固くなりますよ。人間の体はうまくできてますね。逆に言えば笑ったら筋肉がリラックスして喧嘩はできません。その意味で笑いは平和の象徴ですし、リラックスの表現、気持ちよさ、愉快さを全身で表す行為なんです。
 気持ちはポジティブになり、意識は外側に向けられます。つまり何事も上手く収めようという気分ですわね。
 昔、私も会社員をしていたときがありましたが、同僚がよくこう言いました。
 「山口君、今、部長のご機嫌どうかね。どうしてもハンコ押してもらいたい書類があるんだけど」
 「ちゃんと説明すれば、ハンコくらい押してくれるでしょ」
 「アホなこと言いなさんな。あの部長、ご機嫌悪いと何やかんや言って難癖つけるんや。まとまる話もまとまらんよ」
 よくある会話と違いますか。笑っているときと苦虫のとき、部長がどんな行動に出るか、部下がよ〜く知ってます。笑顔のときはホンマに何事もスムーズに進みますが、苦虫のときは何事もうまく進まないことになっています。これも、顔つきによって、その人がどのような心の状態になっているかを端的に表すエピソードだと思います。

笑って、笑わせる生活習慣
 あなたの周りにこんな人はいませんか。私、その人と話すときは、何とか笑わそう、笑わそうとしている自分に気がつきます。
 この人苦虫を噛みつぶしている人とは違います。ちょっとしたことで「ワハ、ハ、ハ」と笑ってくれます。その笑いが欲しくて、少しでも面白い話を仕入れては、その人と会って大きな笑い声を聞かせてもらいます。気分が落ち込みそうなときには、用事もないのにその人に電話を掛けたりすることもあります。相手の笑う声を聞いて心をリラックスさせる、ミラー効果です。
 上手に笑う人っていますね。その人などは人気コンテストがあれば一等賞です。会社やちょっと大きな組織には女性が何人もいて働いています。そういう所では男性の間では内緒でミスコンが行われていて、「ミス職場」という女性がいます。こういう場合はそれこそ美人であればあるほどランクが高いですが、同じように人気度コンテストというものもある。これは女性陣のほうにもあって、どの男性社員に一番好感が持てるかなどという投票が行われています。
 人気度はやはり笑顔、笑い、ユーモアのある人が必ず勝ちますよ。最近、お笑いタレントが美人女優と結婚することが多いでしょ。あれも、このミラー効果ですよ。
 「エッ、あの美人女優がお笑いのタレントと結婚する?」
 映画やテレビ、舞台の看板女優さんは人気もありお金も稼ぐけれども、ストレスも並大抵じゃありません。せめて私生活では笑いとリラックスが欲しいのと違いますか? お笑いのタレントさんは笑いの種をたくさん持っています。何があっても笑いに変えてしまいますから、一緒にいれば楽しいですし、大笑いをして心が癒されることを実感したのでしょうね。女優を射止めるには先ず、笑わせる技術を習得しないといけませんね。
 昔はネクラの人が結構、落語や漫才の名人だったりしましたが、今では普段の性格と仕事が一緒の芸人さんが多くなって、「外で笑わせて、家に戻ったら苦虫になる」というようなことがないのかもしれませんな。
 この間、知人から聞きましたが、海外の病院でもお笑いの必要性を感じて、ガンや心臓疾患などの重篤な患者さんが入院する病棟では、看護師さんがピエロの格好をしているというのです。これどう思います。
 私はピエロの格好よりバニーガールの格好のほうが何倍もNK細胞が増加するように思いますが。ま、冗談はともかく。医学界も笑いの大切さをだんだん分かってきて、どう臨床に取り入れていこうか、と模索している段階のようですね。これ海外の話ですけれども。日本はまだまだ医学界は象牙の塔という感じですから、先が遠いように思います。
 だからこそ、皆さんは自分から笑う習慣をつけて、健康を自ら取り戻すことを心掛けたらいいですよ。

関西人は長生きか
 私も関西人ですが、関西人は関東人よりもどうも笑いのセンスがあるように思います。関東の人はどこか垢抜けているところがあって、お澄まし屋さんが多いですな。あまりはっきり本音を言わないところがある。
 関西人、とりわけ大阪周辺の人たちはどちらかと言えば名より実を取ります。本音をはっきり言います。これは飲みに行くとよく分かりますね。東京の人を北新地などに連れて行くと、ホステスさんが来ても、何か裃を着て正座をしている感じで話をします。大阪人は最初から何を言うのも直裁に、はっきりしている。銀座で飲むのとは違います。
 笑いも関西人は好きですね。何でも笑いにしてしまう。ボケとつっこみが生活習慣になっているといっても過言ではありません。笑わせるのが上手な人のほうが、お澄ましで上品な人より男も女ももてます。もちろん一般論ですよ。
 子どもの頃からお笑いの中で育っていますから、みんなNK細胞が関東人より多いのと違うか? 私はそう思いつきました。
 それでちょっと調べたのですが、厚労省が2004年に調べた数値から、各県の死亡率のワースト3は(人口10万人対)、
 (1)島根県 (1103・8)
 (2)秋田県 (1100・0)
 (3)和歌山県(1090・4)
ベスト3は
 (1)沖縄県 (636・8)
 (2)神奈川県(643・5)
 (3)埼玉県 (645・7)
でした。
 この数値というのは、2004年の各県の人口に対する死亡数の比率を表していて、数値の低いほうが、その県で亡くなった方の率が低いということを表しています。ベストワンの沖縄は長寿国ですから理解できますが、神奈川、埼玉と関東勢の死亡率が予想以上に少ないですな。誤算ですね、これは。
 ちなみに愛知は700・9、東京732・2、大阪753・0と全国平均の815・2よりは低くて、まあまあというところでしょうか。ガンの死亡率を見ますと、やはり沖縄が186・1で一番低いですね。東京は240・4、大阪は255・2という数値が出ています。
 よく統計に出てきます「10万人対」という比率は、10万人に対して何人の人が死んだか、あるいは何人の人がガンで死んだかという比率です。沖縄人は10万人いたら186人がガンで亡くなるということですし、ザ・ワーストの秋田県は10万人いたら306人強がガンで亡くなるとなっています。
 負け惜しみではないですが、沖縄の人は音楽が好きで、踊り好き。何人か集まれば必ず立ち上がって三線を鳴らして、踊ります。踊っている人はみな笑顔でわだかまりも何もない。この明るさには大阪人も負けますよ。また食べ物も健康食が多いですね。これについては後で述べます。環境も人間関係もみんな健康長寿に向いている。
笑ってガンにならない体調をつくる
 私、いつも言ってるんですけれど、その人の免疫力が一番高いときはガンと診断される直前のときですよ。体の中ではガンという悪性新生物を発見した免疫細胞たち、とくにNK細胞やキラーT細胞などはフル活動をしています。
 腫瘍が大きくなるのは、残念ながらこうした免疫力を上回る異常細胞分裂が繰り返されているからです。体調が活性化しているときは、免疫力が腫瘍の増殖力を上回って進行を抑えたり、退縮したりすることもあります。ときには腫瘍を枯死させるときもあると私は信じています。
 これは免疫力が高まっているときの話ですが、ガンの宣告を受けた途端に、顔から血の気が引くように、免疫力もストレスで急激に低下します。ガン宣告をされてから病状が急変して、それまで健常人のようだったのが、いきなり寝たきりの病人になってしまい、あたふたと逝ってしまったという話もよくあります。
 免疫細胞の主力であるリンパ球がガンと戦えるのは、副交感神経が優位に立っているときだと言われています。
 副交感神経というのは「夜の神経」と言われるように、リラックスを導く神経ですし、笑いや和やかな気分を誘導します。副交感神経が優位になると血管は拡張し血液の循環も良好。
 こんなときはガン細胞が登場しても、豊富な血流の中にリンパ球もたくさん流れていて、血管から細胞間に出てきた免疫力の戦士たちは、勇敢にガン細胞と戦います。NK細胞の発射するミサイル、パフォーリンも威力を発揮してガン細胞を駆逐していくでしょう。
 笑いなどでリラックスした副交感神経優位の状態だと、リンパ球はだいたい1ミリ立方の中に2000個以上を数えることができます。この状態がずっと続けばガンとの闘いも、かなり優位に展開されると専門家も言います。
 では笑いがなくなった交感神経優位の状況ではどうなるのでしょうか。交感神経優位のとき体の中では、アドレナリンを分泌します。このアドレナリンが多くなると、アドレナリンの受容体を持った顆粒球がリンパ球に替わって増加します。
 顆粒球も白血球の一種ですが、名前の通り細胞の中に活性酸素の入った粒をたくさん持っています。細菌などに近寄って、この顆粒を投げつけ中に入っている活性酸素で殺菌をする仕組みになっていますが、交感神経が優位になると、この顆粒球が興奮してやたらに顆粒を投げつけ、体内では活性酸素が大量にばら撒かれる状況が発生します。
 さらに交感神経優位の状態は筋肉が緊張し、血管が固くなった筋肉に押されて血流が悪くなります。膀胱の出口にある括約筋もギュッと固くなりますから、尿意などもなくなり排泄量の低下を招きます。戦いのときに尿意を催しては、それだけで降参ですからな。さらに致命的なのは、先ほどの副交感神経優位とは逆にリンパ球が減少しますから、活性酸素の増加とともに腫瘍ができやすく、あるいは腫瘍が大きくなりやすい状態になります。
 このように交感神経優位の状態が続くと、極めて病気を招きやすい状況になります。もっと言えば、交感神経の緊張が続くことは「ガンになる体質」の始まりだとさえ言えるのです。
 この交感神経・副交感神経というのは自律神経を構成し、互いに拮抗した関係にあります。つまり交感神経が優位のときは副交感神経が働きを控えて、アドレナリンが分泌され、逆に副交感神経が優位のときは交感神経が治まって、アセチルコリンが分泌されて体のスイッチを休息・リラックスモードに切り替えます。
 どちらの神経も生活をする上に必要な神経ですが、このバランスが崩れ交感神経が常に優位になるような体質をつくると、ガン体質になりやすいというわけです。物事なんでもバランスが大事ですね。
 ですから、常に笑いを習慣づけることによって副交感神経優位の状態をつくり出し、リンパ球の活躍を促してガンと戦う体質をつくらなくてはならないと思います。

ガン・ハラスメントを追放しよう
 これですね。笑いとは正反対の状態にこのストレスというのがあります。私、ガンはストレスが原因だとさえ思うくらいです。ストレスはいけません。
 ストレスといっても、いろいろなストレスがあって、専門家に言わせるとパンツをはいたり、下着を着けたりするのも一種のストレスになるんだそうですよ。だから寝るときは素裸が一番いいらしいです。そんなバカな! 何十年と生きてますけど、パンツはいてストレスなんて感じませんよ。でもね、皮膚の神経は肌着を身につけることに生理的なフラストレーションのようなものを感じているのだそうですね。
 まあ、でもそんなもん気にしていることがストレスになりますから、これは一種の雑学です。どうでもいい、今は。話の本筋は仕事や人間関係、生活における抑圧感ですよね。これをストレスと私たちは言います。
 会社で上司に毎日いじめられている。家庭では女房から給料が安い、いつまで経っても課長になれない、家が狭いなどとシャワーのように愚痴を浴びせられる。親が痴呆症になって自分しか面倒を見るものがいない。子どもが不登校で学校から呼び出しが……。こういうのは立派なストレスの要因になりますね。
 こういった、自分で解決できない事をウジウジ考えていると、いつの間にかストレスが蓄積して、交感神経優位が居座ってしまうことになる。こうなりますと大変ですよ。夜は眠れなくなる、忘れるために酒を飲む。胃が荒れて食欲もなくなるし、気持ちはキレる寸前。何か事件を仕出かしてもおかしくない状態になる。テレビでよくストレスが嵩じて放火したなどという事件が報道されていますよね。
 これってガン体質そのものですね。状況を変えることはできませんが、感じ方を変えることは何とかやってみる価値があるのと違いますか。
 自分の周りにあるいろいろな問題をすべて解決しようと思うと、それはムリだと直ぐ分かる。だからイライラする。酒や女につぎ込んだり、あるいは競馬・競輪で一儲けしようとして大損したりする。解決するどころではなく、余計ストレスを溜め込んでしまう。ちゃんとガン体質の方程式ができてきますよ。
 だからこう考えたらよろしい。
 「このイライラが私をガン患者にさせる」
 「こんなバカげたことで自分がガンになったらソンだ!」
 そう考えるとどうですか。考えが変わるのと違いますか。イライラを続けたら必ずガンになると思ったら、あなたは必ず自衛策を考えますよ。
 「バカヤロー!こんなことで相手が納得するか!」
 今まで上司にこんな風に怒鳴られたら、尻の穴が萎まってしまいますけど。
 「こんなことで命と引き換えにできるか!」
と思えるようになったら、反応が違ってくるでしょう。
 「そんなら部長はどうしたらいいと考えてます?」
くらいのことは言うようになるかもしれません。
 これは反旗を翻すことなどではありませんよ。受身ばかりになるなと言いたいのです。
みんな苦しんでいるのですよ。部長だって、説明できるなら説明したいんだけど、自分でもいい考えが浮かばない。ついつい言葉もきつくなる。そんなことよくあります。でも、あなたの意識が変われば、これからは違う展開が訪れるかもしれない。
 開き直りはあまりいいことありませんが、いつも部下が受身でいいということもない。「ガンの根絶は医師ばかりに任せていてはダメだ」と私が言うのはこのことを言っているのです。社会もストレスをつくらないようにみんなの知恵を出していけばいい。
 笑いが必要なら、1日1回は会社の中で大笑いできるようなことを考えたらいい。昔、世界一のセールスマンからこんな話を聞きました。彼はストレスを感じたら、海岸に行って大声で怒鳴ったそうです。セクハラもいけませんが、部下を怒鳴り散らしてストレスを振りまく、これはガン・ハラスメントと言ってもいいでしょう。ガンハラもこの際徹底して見つけ出して、職場から追放したほうがいいと思います。

ガン・ノイローゼはガンをつくる
 これだけ周りにガン患者、ガンで亡くなる人が増えてくると、次は自分の番だと知らずに思ってしまう。そう思うようになると、何だか胃がおかしくなったり、胸が苦しくなったりして、
 「これってガンとちゃうかな……」
と考える。
 ガン・ノイローゼの入り口ですな。体のちょっとしたことがガンと直結し、酷い場合はいわゆる心身症のような状態になります。
 こういうガン・ノイローゼの人がガンになる確率も高いらしいですよ。ストレスの場合はガンを意識していませんが、このノイローゼの場合は何でもかんでもガンに結びつけるから、体もガンにならないといかんか!というわけでガンになりやすくなる。冗談のようですけれど、「病は気から」というのは真実をついていると私は思っています。
 これって、マーフィー博士が言う潜在意識に訴える、の逆バージョンです。毎日、毎日「ガンになる、ガンになる」とお題目のように唱えていれば、ガンができるような体になっていくらしいですよ。気をつけなくてはいけません。
 自分がガン・ノイローゼになっているなと感じたら、ネガティブ思考を吹き飛ばす方策を考えてみましょう。ノイローゼだからそれって難しいですな。考えまいとして考えてしまうのがノイローゼの特徴ですから。
 ノイローゼの酷い方は病院に行ったほうがよろしい。ただ素人考えですけど、まあ、それ気味の方は、空気を体から出すことの訓練をしたらどうですか。呼吸のことは後の章で触れますが、とにかく息を外に出す訓練をしていくと、体の緊張が取れて全体がリラックスしてきます。ときどき顔だけでもニヤッとするのはなおよろしい。
 息を吐くことを反復練習していると自然に腹式呼吸になっていきます。ときどきニヤッとしていると笑顔が定着してくる。これは笑いの状態にとてもよく似ていますよ。さらに、ハ、ハ、ハと声を出してみると、腹式呼吸がさらに完全になってきますね。ハーよりもハ、ハ、ハと区切るほうが何倍も息を出す量が多くなるようです。声が出てくるともうこれは笑いと同じです。
 そしてさらに頭の中では「自分は健康だ!」と繰り返して潜在意識に訴えるのが最高にいいですね。マーフィー博士はこう言います。
 「どんな治療がされるにせよ、病を治す本当の力はその人の持つ自然治癒力であり、その自然治癒力を存分に働かせるのは潜在意識だ」
 潜在意識に正しい指示を与えると、あなたの心も体も癒されると博士は言います。そんな簡単なものではない、と人は言うかも知れません。でも、やってみなければ分からない。このようにお金もかからない、他人に迷惑をかけない、そして自分にもよい影響を与えそうなものは、信じてやったほうが得じゃないですか。効果もずっと上がります。
 私はマーフィー博士と何のつながりもない人間ですが、この潜在意識に働きかけ自己実現を図るという手段はとても好きなものです。私はそれで成功しています。お勧めしますよ。

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